「森と関わって働く人」のリアルな現場の声を伝えていく当連載。今回はIT・ICT技術を応用してより安全で、省力化した林業を提案するソフトウェア企画販売の「株式会社ジツタ」を取材しました。これからの林業の働き方を変えるかもしれない、そんな企業の取り組みを紹介します。
いつかは実現する?
林業の全自動化!
愛媛県松山市に本社がある株式会社ジツタは、松山城付近から車で10分ほど走った市街地に位置しています。
中に入って目に飛び込んできたのは広々とした都会的なオフィス。これまでの取材場所は深い山奥だったり、歴史を感じる古い建物だったり、木材にあふれた空間だったりしたので、到着するやいなや軽いカルチャーショックを受けた編集部。森に関わると一口に言っても、こういった職場もあるのだと気づかされます。
同社は昭和21年に土木・建設関連の測量機器の販売店として創業しました。20年ほど前から森林業分野にも進出し、森林測量等のソフトウェア開発のパイオニアとして地位を確立するまでに至りました。
身近なソフトウェアといえば、書類やプレゼン資料などを作成するためにWordやExcel、PowerPointのようなソフトを使いますよね。簡単に言ってしまえば同社が開発しているのはその森林版です。
例えば、GoogleマップのようなGIS(地理情報システム)に、森林管理で必要な機能(測量データや位置情報つき現場写真の紐づけなど)を加えたソフトウェアなどを販売しています。最近ではアプリ開発も進み、アプリだけで測量データを記録・管理できるものも登場しました。スマホで撮影して丸太の直径を一気に計測できる木材検収アプリは、丸太を大量に扱う木材市場や素材生産業者の生産性アップに期待が高まっています。
森林や林業のみならず、建設や設計の知見を幅広く持つ同社では近年、“無人の重機で森林作業道をつくる”官民連携の研究プロジェクトにも参加しています。建設業界では人手不足解消の目的で「アイコンストラクション」という生産性向上を目指した三次元化の取り組みが進んでいますが、その技術を林業の道づくりにも応用する流れがあります。同社代表取締役の山内延恭さんによると、今後この動きは加速していくだろうということです。
「この先10年、15年したら林業の担い手はさらにいなくなる可能性があります。それに、労働災害を減らしていく観点からしても、なるべく人がいなくても現場の作業ができるような体制をつくっていこうという国の考えもあるんですよ」
ごく小さな規模で木を切って暮らすという形は残る一方で、現場を離れたところからパソコン上で機械を操作する、という林業の働き方も増えてくるのかもしれません。そうした次世代のシステム、新たな林業の形を模索する取り組みが、ここ愛媛で動き出しています。
業界トップシェア
そのワケとは
民有林の森林管理システムでトップシェアを誇る株式会社ジツタですが、森林業界に足を踏み入れたきっかけはさまざまなタイミングが重なった偶然だと代表取締役の山内さんは話します。
「GPSの利用がはじまったのは1995年のことで、その後に山でも使えるアメリカ製のGPSが出てきました。当時は木の下でGPSなんか使えないだろうって話だったのですけど、メーカーの紹介で試しに実験してみたら意外とうまく計測できたんです。借りたものは英語版で250万円くらいするものだったので、もう少し安くして日本語版がつくれたら売れるだろうなと思ったわけです」
同社の創業時から主要な顧客先だった建設業界が90年代に不況に見舞われたことも相まって、今までとはちがうことに挑戦してみようという動機もあったと言います。
「それに、京都議定書をきっかけに地球温暖化が話題になっていた時期でした。国が森林資源モニタリング調査をはじめたんだけど、そこでGPSが必要とされるようになって。そうやって色んなタイミングが重なって森林業界に関わるようになったのが正直なところです」
そこから全国各地の大学や研究機関、自治体、森林組合へ営業に飛び回るようになりました。当時は他に森林用のGPSを扱っている企業もなく、まさにパイオニアとしてのはじまりでしたが、だからこそ仕事がしやすかったと山内さんは話します。
「実はそんなに苦労していないんです(笑)。世の中に比べるものがなかったから。それに、どのお客さんからも異口同音に同じような要望が来るので、それに対して一つひとつ対応してシステムを改善していけば良かったから、すごく仕事はしやすかったですね」
要望をもとにシステムの改善を繰り返しました。そうこうするうちに会社の存在も口コミで業界内に広がり、自ずと受注も増えていきました。
「林業界のお客様は心が広い方が多いと思います。いいお客さんばっかりでちょっと話したら『いいじゃない』みたいな感じで話も進むし。役場などに営業へ行くと『あんた愛媛からどうやって来たの?大変だねえ』って言ってくれることもありました。そういう労いの心がある日本はいいなあと思いました」
その後も、時代の流れが追い風となり、同社のノウハウがより求められる状況になっていきます。
「山林所有者の高齢化による不明土地の問題が出てくるようになりました。土砂災害があったときに工事ができなくなるから山林の所有者や土地の境界を明確にさせましょう、という話になっていったんですよ」
こうして地籍調査や森林測量などに必要なソフトウェアの導入が進みました。しかし、どんなに優れた技術でも普及すればその技術が“当たり前”になり、求められるレベルは上がっていきます。だからこそ同社では、「より便利で人を選ばずすぐに使えるシステムを安価に提供し続ける」ことを使命に、現状に満足せず、日進月歩でトップランナーを走り続けています。
林業のICT化こそ
地方が中心になっていく
「実は最初の頃はスギとヒノキの区別がつきませんでした(笑)。でも、林業との関わりが増えると区別がつくようになるから不思議なものです」と山内さん。業界への関わりが深くなるほどに、同社のICT技術は林業だけでなく日本の森林を下支えする存在だと実感するようにもなったと言います。
「森林はご存知のとおり『多面的機能』を持つ日本の数少ない資源であり財産です。一方で林業は、“業”という名のとおり産業の一種です。林業が廃れたり持続性が失われたりすると、当然森林は荒廃します。私たちはICTを使って林業が産業として成立していき、その結果として豊かな森林という国富が永続的に存続することに貢献していきたいと思っていますし、その能力を有していると信じています」
ICTというと、東京周辺の企業が抜きん出ている印象がありますが、一概にそうとは言えません。ましてや林業となると、フィールドは森林です。ICT×森林・林業は地方でこそ推進力を増していくでしょう。株式会社ジツタで森林分野を担当するGIS事業部には、各地から少しずつメンバーが加わり、現在は7人のチームで動いています。まさに林業のアップデートの震源地です。目が離せません。
さらに今年は、林業に関わって働く道を模索し、同社と巡り合った女性も新たに入社しました。次回はその新入社員・勝野さんへの取材から、普段の仕事内容や実際に働く人の声をお届けします。
▶後編はこちら
\株式会社ジツタ正社員募集中!/
【募集職種】
自社開発システムの企画および販売やサポート
【雇用形態】
正社員
【給与】
大学卒初任給 212,000円(住宅手当・地域手当別途)
※参考モデル 年収435万円/30歳/経験5年/四国地区/月給28万円
【待遇・福利厚生】
賞与年2回(6月・12月) 昇給年1回(7月)
各種社会保険あり(雇用、労災、健康、厚生)
退職金あり(勤続3年以上)
【仕事内容】
・販売・サポート
日本全国の森林組合・林業事業体・地方自治体への自社ソフトウェアやGPS等の測量製品の提案・販売を、チームで協力して行います。
・企画・開発
顧客からの要望や行政の政策から新たな自社ソフトウェアの企画および開発を行い、全国へ販売展開。行政機関や研究機関からの求めに応じ、研究開発事業や補助事業に参画し、問題解決や課題解決の手法を検討し、実証試験を行います。
【勤務地】
東京都中央区・愛知県名古屋市・愛媛県松山市(各所2名程度)
【勤務時間】
8:30~17:30(休憩1時間)
【休日休暇】
週休2日(ただし第3土曜日のみ出勤)・夏季休暇・年末年始休暇
※2019年度の休暇は116日
【求める人材】
人物像
当社の事業に興味が持てる方。林業のIT・ICT化を自分の力で普及してみたい方。真摯に従事できる方。外向的(人と話すのが苦ではない)、積極的(受けた仕事をこなすだけでなく自ら仕事を創り出す)柔軟な考え(あらゆる角度からアプローチ)ができる方。
資格
・高卒以上、要普通自動車運転免許(AT限定可)
・Office系のソフトの使用できる方
・建設や測量分野、地理・自然環境・農林業の分野に携わった経験 、システム提案やソフトウエア販売の経験があればなお良い
【選考プロセス】
書類選考→一次面接(web面接)→就業条件や待遇の確認→二次面接
※書類は履歴書と職務経歴書(既卒者)
※一次面接時に筆記試験やPCスキルの試験を行う場合があります
※随時選考を行うため、募集人員に達した場合、受付期間中においても受付を終了します。
応募前に下記の募集ページや電話等でご確認ください。
【採用窓口・問い合わせ先】
株式会社ジツタ 総務部採用担当
〒790-0964 愛媛県松山市中村二丁目8番1号
TEL 089-931-7175 FAX 089-934-7701
メール info2@jitsuta.co.jp
HP https://www.jitsuta.co.jp/