森で働く
# 34
木造建築に欠かせない
現場監督の存在
2025.2.3

暮らしに身近なところで木にふれられる仕事といえば木造建築がその一つでしょう。大工や設計士など関わり方はさまざまですが、工事現場で必要不可欠な存在とされるのが現場監督です。言葉からなんとなく色んな人に指示をする役割なのかなと想像できますが、具体的な仕事内容は謎に包まれています。

そこで今回は、響hibi-ki運営元のグループ会社である〈株式会社井上工務店〉の井端啓輔さんに、現場監督の仕事について話を聞かせてもらいました。

写真・文:田中 菜月

現場監督の仕事って?

株式会社井上工務店
プロジェクトマネージャー/一級建築士
井端啓輔さん

岐阜県高山市出身の井端さんは地元の工業高校を卒業後、建築系の専修学校に進学し、卒業後に井上工務店に入社しました。工業高校へ進学したことをきっかけに建築に興味を持ち、現場監督の世界に飛び込んで16年になります。

現場監督は「施工管理」と呼ばれる業務を担当する職種です。
施工管理の基本は、
①現場の安全を管理すること
②建築物の品質を管理すること
③工事の工程を管理すること
④工事の原価を管理すること
この4つだと井端監督が教えてくれました。

「4つ全部得意な人もいるし、どれか一つが飛び抜けている人もいます。例えば、“原価を管理する”仕事では、経営者の疑似体験をしているような瞬間もあって、決められた予算内でどれだけ満足してもらえる品質の建物がつくれるかを考えるわけです。そういったことを考えるのが好きな人がいる一方で、お金のことは得意じゃないけど品質の面で材料の特性にめちゃくちゃ詳しい人もいたりして。施工管理といっても業務内容はかなり幅広いので、その中から何かしらは自分の得意分野が見つかる、そんな職業かなと思いますね」

岐阜県養老町にある自社の遊び場リニューアル工事現場にて取材を行った。

「現場監督によっていろいろな考え方はあると思うけど、自分の場合はいかに職人さんがやりやすい環境をつくれるかが現場監督の仕事だと捉えています。そういう思いを持って職人さんたちに仕事をしていただいている、という感覚です」

実際に手を動かして建物をつくっていくのは大工を中心とした職人たちです。そんな彼らのパフォーマンスを最大限に引き出していくことが現場監督の仕事であり、それが建築物の完成度の高さにもつながっていく。井端監督の話を聞いていると、現場監督は工事現場を支える礎のような存在なのだと気付かされます。

施工管理の魅力
井端監督の場合

毎月マラソン大会に出場するくらいマラソンにハマっている井端監督。マラソンと現場監督は同じなんだと熱く語ってくれました。

「マラソンで走ってる最中は『いつ終わるかな』ってことばっかり考えてるくらいには苦しい。でも、ゴールした瞬間は達成感があって、次もまたやりたい気持ちになる。現場監督の仕事も同じで、工事の最中はつらいことや嫌なこともある。でも、完成が近づいてくると『やって良かったなあ』って、今まで得たことのないような喜びを感じるんです」

「レースに向けた段取りも施工管理の仕事と一緒です。いつまでにこのトレーニングを終わらせて本番はこうだっていう段取りをしておけば、あとはレースで走るだけ。そこまでいかに自分の状態をつくりあげるか。それは施工管理も同じです。現場監督が現場であたふたするときは、段取りができてないってこと。逆に、『あの人暇そうやな』って思わせる人が一番優秀。仕事はほぼ終わってるってことだから」

指示どおりに作業が進んでいるか心配になることや、計画していたやり方だと問題が起きるのではと不安がよぎることもあるそうですが、苦しい瞬間が色々あっても、それ以上の達成感が次の仕事へと自分を突き動かしていくのだと井端監督は言います。

「苦しくなってくると『またこの悩みきたな』って思うんやけど、達成感を味わうと次が楽しみになってくる。その繰り返しだし、それでいいのかなとも思う。迷いなく、『これが自分の天職だ』なんて思って仕事できてる大人って、そんなに多くはいないはず。大人だって迷いながら仕事してるんだから、これから社会に出る子が自分に向いてる仕事が分からないのは当然のことだし、やってみないと分からない。

やる前から深く考えずに、とりあえず飛び込むしかない。そっから考えればいいと思います。もし現場監督に興味があるっていう子がいるのであれば、とりあえずこの世界に飛び込んできてもらって、苦労と完成の喜びを一緒に分かち合えば、『ああ、この仕事いいな』って思ってくれる人がきっといるんじゃないかな」

井端監督の話を聞いていると、現場監督ではない自分までなんだか励まされた気持ちになるのと同時に、謎に包まれていた現場監督の仕事がぐんと魅力的に見えてきたのでした。

宮大工から始まった
井上工務店

井端監督が所属する井上工務店は、宮大工だった故・井上光が1965年に岐阜県高山市で創業しました。当初は個人の住宅を手がけていましたが、次第に重要文化財の改修や、札幌かに本家・和食麺処サガミなどの商業施設の工事を請け負うようになり、携わる建築物のジャンルと地域が広がっていきました。

当時は、田舎の工務店から日本各地へ大工が旅立って工事を行い、かつ対企業を顧客とするスタイルはかなり珍しかったようです。そこには、先を見据えて新しいことに挑戦しようとする井上光元会長のスピリットがありました。

「これまでの会長の決断がなかったら、きっと今みたいな工務店にはなっていなかったと思う。当時から木に愛着を持って新しいことに挑戦してきたし、それに枝葉がついて今、自社で運営しているような遊び場施設につながった。会長が一番喜ぶことは、自分たちが会長の遺志を継いで、遊び場のように今までにない形で木を活かして、昇華させていくことだと思う」

井端監督が言うように、井上工務店と飛騨五木株式会社(2015年創業)が連携することで活動領域を拡大してきました。工務店の林業、製材、建設、自然エネルギーといった領域に加えて、デザインやオウンドメディア、商品開発・販売、遊び場運営など、工務店だけではチャレンジできないようなことにも挑めるようになっています。

「遊び場みたいな施設が建設できるっていうことは、グループ会社みんなの個の力が集まったからこそできるものだと思う。誰でもつくれるものではないと思うし、これはみんなのおかげ。そう思って現場で仕事してます」

そう話す井端監督は、会社の考え方や働き方が自分に合っているからこそ、ここまで続けてこれたのかもしれないと言います。

「自分がこうやりたいと思った仕事に対して、任せてもらえたことが一番大きいかな。それぞれが望む働き方を認めてくれる会社だと思います。もし現場監督として新しい人が入ってきてくれるのであれば、現場監督としてのスキルの積み上げ方とか、どういう技術を身につけたら将来何ができるようになるかってことを伝えてあげたいですね」

今後、飛騨五木グループでは日本各地に遊び場を展開していくとともに、住宅や公共施設、オフィスや店舗など多岐にわたる建築物をつくっていきます。地域の木材を活用していくことはもちろんのこと、利用される方や地域で暮らす方々にとって居心地のいい、地域に根ざした空間をつくる。そんな思いで前進していきます。

こうした未来に向けて、井上工務店ではともに木造建築をつくりあげる現場監督を募集中です。ちょっとでも興味が湧いてきたという方は、ぜひぜひ現場監督の世界に飛び込んでみませんか?まずは話を聞いてみたいというお問い合わせも大歓迎です。お気軽にお問い合わせください!

●施工管理(現場監督)の募集要項
https://yftwndoh.jbplt.jp/recruit/38147882

●井端監督が担当した遊び場リニューアル工事
https://hibi-ki.co.jp/hibikinohibi036/

●Information
株式会社井上工務店
〒506-0818 岐阜県高山市江名子町2715-11
0577-33-0715
https://www.instagram.com/inouekoumuten.hidagoboc

田中 菜月 (たなか・なつき)
1990年生まれ岐阜市出身。アイドルオタク時代に推しメンが出ていたテレビ番組を視聴中に林業と出会う。仕事を辞めて岐阜県立森林文化アカデミーへ入学し、卒業後は飛騨五木株式会社に入社。現在は主に響hibi-ki編集部として活動中。仕事以外ではあまり山へ行かない。