ひビキのヒび
# 36
夜あそびできる“森のわくわくの庭 よぞら”
リニューアルオープン!
2025.2.13

自社で運営している遊び場〈森のわくわくの庭 養老店〉が大変貌を遂げていると聞きつけ、その現場を取材してきました。新たな形に至った経緯と、工事の裏側をお届けします。

写真:田中カメラ(Dreamy Photo Tanaka)/文:田中 菜月

大人も楽しい
昼と夜が溶け合う空間

森のわくわくの庭は、子どもたちが自由な発想で思いっきり遊べて、家族で1日ゆったり過ごせる遊び場です。岐阜県の養老町と輪之内町に2店舗あります。このうち、リニューアルしたのは養老町にある店舗です。2024年12月25日(木)から、〈森のわくわくの庭 よぞら〉としてリスタートしました。

館内に投影されるプロジェクションマッピング。

なんといっても特徴的なのは、時間によって館内のライティングが移り変わっていくことです。施設全体が暗くなる時間帯もあるので、日中なのに夜あそびしている感覚が味わえます。子どもだけじゃなく、大人だってついはしゃぎたくなる。そんな場所に生まれ変わりました。

飲食物の持ち込みがOKになり、ドリンクバー飲み放題付の入場料(1,200円。2歳まで無料)となっているため、まるっと1日過ごすことができるのもうれしいポイントです。今後、わたあめがつくれる自販機や新たな照明も増えていく予定とのこと。“よぞら”はさらに進化していきます。

※いずれも「よぞら」のみ

ボールプールエリアが新登場!
既存の木製遊具に新たに加わった「トラスブリッジ」。ライティングによって印象も変わっていく。

ぶっ飛んだ感じの遊び場になっていますが、個人的には店舗の周辺環境とのギャップが最高に気に入っています。養老の滝や養老天命反転地、養老焼肉街道へ行く際は“よぞら”にも立ち寄って、そのギャップを確かめてみてください!

写真中央の建物が〈森のわくわくの庭 よぞら〉。濃尾平野と養老山脈に囲まれている。photo by Shurina Ata

●館内の詳細はこちら
https://moriwakunoniwa.com/yozora

クラブと雲の融合

今回のリニューアルの構想は、「クラブっぽくしたい」という施設運営側のアイデアから始まりました。

「クラブみたいな遊べる場所が岐阜にはないので、あったら面白いんじゃないかっていう話をスタッフさんとしてたんです。ドゥンドゥン音楽を流して、ライトを照らしたら楽しいんじゃないって。でも、本当に実現することになるとは思ってなかったですね」

飛騨五木で施設運営管理を担当する滝川佳澄さん。入社7年目。石川県出身。photo by Shurina Ata

「普段、施設でアルバイトに入ってくれている大学生の子たちが、このあたりにデートスポットがないって言ってるのもきっかけになりました」

子どもやファミリーだけでなく、大人だけで来ても楽しめるような施設にできないか。どの年齢層の人が訪れても楽しめる場所になれば、より地域に根ざした遊び場になっていくはず。こうした思いをベースに、リニューアル案を具体化させていったのが設計チームの黒木克将さんです。

転職前は内装の設計・施工をしていたという設計士の黒木克将さん。黒木さん写真提供。

約1年前に飛騨五木に入社して、初めての遊び場の設計となります。かつてスーパーだった名残の無機質なモルタルの床と、木材の軸組をよりナチュラルにつなぐ仲介者としての「雲」をテーマに設計を進めてきました。

雨の日の雲をイメージしたエリア「くもー1」

照明の移り変わりで昼から夜に変わる時間軸に加えて、天気の要素も重なっている点がポイントの一つになっています。例えば、上の写真の箇所は高いところに雲があり、下には水たまりをあしらうことで、雨が降っているイメージに。その他の雲は形や高さをバラバラにして、多様な天気を表現していると言います。

「今回は使ってみたいもの、やってみたいことに自由に挑戦できたので楽しかったですね。『この素材を使ったら面白いんじゃないか』って、自分も子どもになったような感覚で楽しんでました(笑)」

エポキシ樹脂に色粉を混ぜて流し込んだ床面。子どもたちに説明する黒木さん。

「特にエポキシ樹脂が面白かったですね。あんまり使うものではないので、大工さんもみんな使い方がわかんなくて(笑)。分量を量りながらちょっとずつ粉を入れて混ぜるっていう実験を繰り返しながら、なんとか使えるようになりました。例えば、ボールプールエリアの床の仕上げにもエポキシ樹脂を流していて、館内が暗くなると中の明かりが反射して光が外に漏れ出るようになってます」

エポキシ樹脂の床により幻想的な雰囲気を醸し出すボールプールエリア。

「今回は自社の遊び場ということもあって自由に設計することができました。ただ、妄想を膨らませて攻めすぎると子どもたちにとっては遊んだときに危険な可能性もあるので、そこのバランスが難しかったです。落ちると危ないっていう判断で急遽手すりをつけた場所があったり、最終変更になった箇所もあります。次に遊び場を設計するときはそこのバランスをうまくやりたいですね」

運営担当者・設計士・現場監督で話し合いながら工事を進めることで、ケガ等のリスクを抑えつつ、チャレンジングな設計を活かす道が模索されてきました。こうした取り組みができるのも、これまでの店舗運営の経験があってこそ。きっと次にできる遊び場は、また違ったものになるはずです。

新たな気づきを得た
リニューアル工事

リニューアル工事は11月上旬から始まりました。黒木さんが作成した図面を頼りに、現場監督と大工さんが着々と工事を進めていきます。

造作中のトラスブリッジ。井端監督写真提供。
造作中のくもー1。ベニヤ板で雲の形を表現している。井端監督写真提供。
塗装前のボールプールエリア。井端監督写真提供。

現場監督を務めた井端啓輔さんに、今回のリニューアル工事を振り返っての感想を聞かせてもらいました。

「今回はいつもより木の主張が弱い感じがしました。だけど、木に重きを置かずに違うところで攻めていて、ひっそりと木があるような店舗のつくり方もいいなって思いましたね」

グループ会社である井上工務店に所属する井端啓輔さん。これまでも自社の遊び場の現場監督を担当してきた。編集部撮影。井端監督取材記事はこちら

「コンテンツに寄り添える木というか、木材じゃなくてもいいところに木がある方が、木の使い方としてはめちゃくちゃポテンシャルがあると思います」

建築で木材を使う場合、柱や梁、床など、どこにどのような木材を使うかはある程度決まっているのが一般的です。ですが、今回のリニューアルでは、雲の形を表現するために木材が使われているように、ぱっと見ではわからないところにも木材があります。

「山に立っている木が加工されて柱(製材品)になったときに、価値がついて木材としての単価が上がっていくんだけど、それだけじゃなくて、木材になったものがさらにこういうエンタメの空間になることで、入場料としての付加価値も新たに生まれる。本来の木の使い方とは違う形で昇華されているからこそ、木の可能性を感じますね」

地域経済という視点で考えたときに、不動産としての森林は価値が低くなっているのが現状です。しかし、森林資源の一つである木を有効活用して付加価値を高めることで、価値を何倍にも増やせる可能性もまたあります。それによって、地域の仕事が増えて、働く人の収入も増えて、税収も増えて…、といったように地域の人たちがより暮らしやすい社会につながる。木の価値が高まれば、苗木を植えて、育てて、伐採して木を使う、といった持続的な資源の循環にもつながっていきます。木はそうしたポテンシャルを秘めているのです。

〈森のわくわくの庭 よぞら〉を訪れた際は、使われている木材にふれてみて、森にも思いを馳せてみるとまた別の景色が見えてくるかもしれません。ご来場の際はぜひ響hibi-kiを見て来ましたとお伝えくださいね!皆さまのご来場をお待ちしております!

●Information
森のわくわくの庭 よぞら
〒503-1335 岐阜県養老郡養老町宇田582番1 イオンタウン養老SC内
営業時間:10:00~17:00(最終受付 16:00)
https://moriwakunoniwa.com/yozora

田中 菜月 (たなか・なつき)
1990年生まれ岐阜市出身。アイドルオタク時代に推しメンが出ていたテレビ番組を視聴中に林業と出会う。仕事を辞めて岐阜県立森林文化アカデミーへ入学し、卒業後は飛騨五木株式会社に入社。現在は主に響hibi-ki編集部として活動中。仕事以外ではあまり山へ行かない。