ひビキのヒび
# 30
響hibi-ki2024
変化の波を越えて
2024.1.4
photo by Isao Nishiyama

新年明けましておめでとうございます!響hibi-kiがスタートして、これで5年目を迎えます。去年の編集部は大激動といっても過言ではないくらい変化に富んだ1年でした。この変化を経て、新たな年はどこへ向かっていくのでしょうか。

写真:編集部/文:田中 菜月

林業ボードゲームの
クラファンが始動した春

2023年の年始の記事では、「林業ボードゲームの普及版としてより本格的なゲームセットを製作・販売できないかと検討中です。いろいろなジャンルの学校で使ってもらいたいですし、岐阜県以外の地域でも林業ボードゲームを広めていけるように、さらなる種まきをしていこうと企んでいます」といったことを書いていました。

●ひビキのヒび #24「響hibi-ki2023 革命の狼煙は上がった」
https://hibi-ki.co.jp/hibikinohibi024/

実はこのときから、林業ボードゲームの製品化に向けたクラウドファンディングの実施を考えていました。年明けからクラウドファンディングの本格的な企画と準備を進めて、3月15日(水)から約2ヵ月、プロジェクト支援の募集を開始するに至ります。林業ボードゲーム体験会の東名阪ツアーを開催してみたり、ひたすら知り合いや関係者にボードゲームを見せて回ったりして、どんな反応が返ってくるかずっとハラハラしていた時期でした。ゲームに対してはポジティブな反応が多かったものの、クラファンの支援には必ずしも結びつかなくて、次第にヤキモキするようになっていたのは懐かしい思い出です。

大阪での体験会のひとコマ。

当初の目標金額は200万円で、達成できなければ返金してプロジェクトは実施しない“All or Nothing方式”で募集していました。ところが、終了間近の5月18日時点で支援額は約60万円と芳しくない状況でした。とはいえ、体験会などを開催する中で、「絶対に商品化してほしい」「自分の活動でも使いたい」と言ってくださる方と何人も出会ってきました。そうした方の声に応えたいという思いもあり、社内やクラファンの運営元の方と協議を重ね、目標金額を65万円に変更することにしました。ずるいやり方かもしれませんが、少しでもニーズがあるのであれば製品化した方がいいという考えに変わっていったのです。目標額を変更後、製品化が濃厚になってきたからか支援者がどどっと増えて、最終的に83人の方から79万1500円のご支援をいただくことができました。本当にありがとうございました!

製品の完成予定は2023年の秋頃でしたが、ゲームデザインの見直しやパッケージのつくり込み、副読本の企画制作などにより、2024年春頃の完成を目指して今まさに製作を進めているところです。年明け後は何よりもボードゲーム製作に注力していきます!完成までもう少しお待ちください。

ちなみに、クラファンの準備と同時並行で取り組んでいたことがあります。飛騨市林業振興課からの業務委託で開催した「飛騨の“森で働く”見学会」です。飛騨市の林業就業者を増やしたいという依頼で企画したイベントですが、いきなり就職を考えてもらうのはハードルが高いだろうし、まずは森林文化が豊かな飛騨市そのものを好きになってもらうことが大事なのではと考え、飛騨の森にまつわる歴史や文化にふれながら林業現場も見学するといった内容に仕立てました。

見学会の前半は案内人とともに飛騨の古い町並みを散策。「飛騨の匠文化館」では飛騨の木を使った建築や大工技術・道具にふれた。

●ヒビキツアーズ #31「飛騨の“森で働く”見学会 2023」
https://hibi-ki.co.jp/hibikitours031/

年末にはこの見学会のことをすっかり忘れていたのですが、つい先日、見学会の参加者の一人からメールが届きました。なんとこの春から飛騨市に移住することが決まったそうです!林業現場で働くわけではないものの、森林に関わるような職種を希望されているとのことでした。たった一人ではありますが、自分たちがつくったものがしっかり響いているのを感じて、仕事の面白さを実感することができました。またこうした仕事の依頼があれば企画運営をやりたいなあと思っていますので、ぜひご相談お待ちしています!

各地への出前授業が広がった
夏から冬

見学会の開催やクラファンの実施で怒涛の春が過ぎていき、夏が近づいてくる頃には岐阜県内の5つの農林高校での出前授業が始まります。2022年から継続して開催できたことに安堵しつつ、今回は岐阜県の林業就業支援機関である〈森のジョブステーションぎふ〉からの業務委託として実施できたことも喜ばしいことでした。まだまだ持ち出しは多いですが、事業として継続していける可能性が見えてきたのです。合わせて、各農林高校から希望者を募って開いた「ぎふ林業甲子園」は、前年の内容に競技形式を加えたものにアップデートすることができました。競技も大白熱でスタッフ側も運営していて楽しすぎるイベントでした。

●ひビキのヒび #29「『ぎふ林業甲子園2023』大接戦の競技レポート」
https://hibi-ki.co.jp/hibikinohibi029/

出前授業に関しては、県外からの依頼も少しずつ増えてきています。10月には石川県の“緑の少年団”に所属する小学校5〜6年生向けに林業ボードゲームのワークショップを開き、新潟県魚沼市では“魚沼森林インストラクター養成講座”のプログラムの一環として大人向けの体験会を11月に開催しました。

魚沼市での体験会のひとコマ。どういう戦略でゲームを進めるかで性格が出るのは子どもも大人も同じ。

この他、地元の中学校や短大でも出前授業を実施し、小学校・中学校・高校・短大・大人と幅広い層に対して林業ボードゲームを体験してもらうことができました。年齢層によって反応は多少違いますが、どの層も確実に夢中で遊んでくれることが実感できたことは大きな収穫です。振り返ってみると、この1年で20件452名(ボードゲーム以外の授業等も含む)の方に対して森林や林業の話をする機会をつくることができました。

こうして各地へボードゲームを持って授業に行っていた影響か、思わぬ教育との関わりもありました。岐阜市立藍川小学校では、裏山でのドングリ拾いや来年の植林に向けたポット苗づくりなどを行いました。クラファンの新聞記事を見てくれた同校の堀副校長が声をかけてくれたのが出会いのきっかけでした。実際にお会いしてみると、私の中学時代の技術の先生であることがわかり、そこから話がいろいろと盛り上がって、ふるさと教育の一環として森の話や苗づくりの活動を一緒にやってみようという話になったのです。

育苗ポットにドングリを植え、週1回水やりをして春に芽が出るのを待つ。次の秋には学校のそばを流れる長良川の源流域・郡上市の山林に苗を植えに行く予定(植林用のドングリは郡上で採取したものを使い、裏山で拾ったドングリの苗木は盆栽として育てる)

これとは別で、岐阜県内の公立小中学校に勤務する教員3名で組織された〈gifu teacher’s labo〉の方々と連携して、学びの野外フェス「あそぼっけまなぼっけ—楽しい学びの出会いと発見—」も開催しました。このイベントについては近々記事を更新予定なので、詳細はそちらでお伝えします!

そんなこんなで大激動な1年だったわけですが、一番大きな変化は編集部に新メンバー・狩野和也さんが加わったことかもしれません。公務員として林業分野の仕事を担当していた狩野さんは以前から響hibi-kiを見てくれていたそうで、一念発起して飛騨五木に入社し、山形から岐阜へ来てくれたのでした。入社後は早々に奈良県吉野へ取材に行き記事制作をまるっとお任せし、出前授業もほぼ狩野さんに担当してもらい、今の響hibi-kiをがっつり支えてもらいました。そのおかげでこれまでできなかったような教育関連の取り組みもできたりと、活動の幅が広がったように感じます。今後は響hibi-kiがメディアとしてあまり注力できていなかった動画制作も託し、さらに活動を伸ばしていきたいと思っています!

それと同時に、今年はようやく林業ボードゲームの販売ができそうなので、響hibi-kiの展開も新たなフェーズに入っていきそうな予感がしています。明確に何か決まっているわけではないですが、メディア活動の中で蓄積してきた私たちの知見をさまざまな形に変換して、これから出会っていく人たちの新たな学びや発見を引き起こすような動きをつくっていきたいと考えています。今年は何が起きるのか、お見逃しなく!

田中 菜月 (たなか・なつき)
1990年生まれ岐阜市出身。アイドルオタク時代に推しメンが出ていたテレビ番組を視聴中に林業と出会う。仕事を辞めて岐阜県立森林文化アカデミーへ入学し、卒業後は飛騨五木株式会社に入社。現在は主に響hibi-ki編集部として活動中。仕事以外ではあまり山へ行かない。