静かなる革命
# 14
ある山主の手記⑦
材木以外の活用の道を探る
2022.4.20
photo by Isao Nishiyama

実家で山を所有しているが、どのように活用すればいいかわからず持て余している所有者も多くいることだろう。そんな“山主”の目線で山の活用を探ってみたいと、実家で山林を所有しているhibi-kiのライター安江氏に手記を残してもらうことにした。所有する山林とどう関わり、活用していくのか。それとも、しないのか。率直なその足跡を追っていこう。シリーズ第7回では、持山にある資源の有効活用について“薪”をキーワードにいくつかの試みを行った。果たしてどんな活路が見えてきたのだろうか?

写真・文:安江 悠真

針葉樹は
薪として使えるのか

《過去の手記一覧》
どうする?実家の山
土地の記憶
山仕事の歴史
あいまいな境界線(現場編)
あいまいな境界線(机上編)
⑥ 山を整備するとはどういうことか

コロナショックや戦争により世界的なインフレが続いていて、原油価格が高騰している。そんな話を聞いていると、エネルギーを備蓄しておくことの大切さを考えるようになる。

持山の資源について、用材(ここでは、建築用や家具用の材木≒丸太として原木市場に出される木材のことを指す)以外の使い道は無いものかと考えていると、“燃料としてのバイオマス資源”に自然と目が向く。特に、加工する手間が少なそうな“薪”として使うのはアリなんじゃないかと思い、調べたり試したりしてみた。

photo by Isao Nishiyama

持山にある木のほとんどは、スギやヒノキ等の針葉樹。なので、そもそも針葉樹が薪として使えるかどうかをまずは調べてみた。「広葉樹には劣るけど使える」というのが自分の結論。その理由を簡単に書き残しておく。

広葉樹に比べて針葉樹が薪に適さないといわれるのは、木に含まれる樹脂(油分)の量や密度が関係している。樹脂が多いと燃やした時に煤がつきやすく、薪ストーブのメンテナンスが大変になる。放っておくと煙突火災などの危険もある。ただし最近では、十分に乾燥させた薪であれば、燃やした時のススの量は広葉樹の薪と大差ないことがわかってきている。

広葉樹に劣ると思う一番の理由は、密度が低いこと。つまり、すぐに着火するけど火持ちはしない。なので、広葉樹の薪材が手に入る薪ストーブユーザーは針葉樹を焚きつけとして使うことが多い。他にも、すぐに燃え上がる針葉樹の薪は温度変化が激しく、鋳物の薪ストーブが割れてしまう危険性があるらしいが、こちらは使う人が火力を適切にコントロールすれば問題ない。

逆にいえば、キャンプなどで焚き火する時にすぐに火のつく性質はありがたい。外ですぐ暖をとりたい時や、焚き火で料理したい時などは針葉樹の薪は使いやすい。

家にあった道具で
試しに薪をつくってみる

針葉樹の薪でもなにかしらで使えそう。なにも使い道がなければ自分がキャンプへ行くときに燃やせばいいか、くらいの気持ちで薪づくりをやってみることにした。

薪を作るために必要な道具といえば、まずチェーンソーを思いつく。実家にはチェーンソーがあったけど、この時点でチェーンソーを駆使して自分で木を伐ることはあまり考えていなかった。というより、危ない道具だと思っていて使うのが怖かった。

幸い持山には保育間伐(樹木の育成のために間伐は実施したが、間伐材は運び出さずその場に木を残しておく間伐のこと。切り捨て間伐という言い方もある)で放置された倒木がたくさんあるので、木を伐らなくても薪が調達できそうな環境にあった。なので、試しに作る程度ならノコギリでも良いかと思い、実家にあったノコギリを使うことにした。

それから、薪を割るための道具。薪割り機は手動のものなら1万円~、油圧式のものは数万円で購入することができるらしいが、あまり予算はない。斧ならあるかもしれないと思い母に聞いてみたところ、同じ町内にある母の実家に斧があるとのこと。昔、薪で風呂を沸かしていたことがあったらしい。かなり年季の入ったものだが、錆を落とせば十分使えた。

これで一通りのものが揃った。山から倒木を運んできて適当な長さに切り、斧で割る。ノコギリで木を切るのは想像以上に大変な作業だったが、30kg程度の薪を調達した。

薪の使い道と経済的な価値
そこから得られたもの

薪の使い道として、まずは自分で使うことを想像してみる。薪づくりの大変さはあるとしても、自分がもし薪ストーブユーザーなら燃料が無尽蔵に手に入る。最近は一般家庭用の薪ボイラーもあるらしい。設備の導入コストを考えると、トータルの生活費が安くなるかは疑問。だけど、ゆらめく火を見ながら過ごすのは贅沢だと思う。暖房費や給湯費を自給できることや、エネルギー源をストックしておけることの安心感は大きい。

次に、他の誰かが使うという使い道。特に、“薪を売りものにする”という選択肢。流通している薪の価格帯をみると、立米単価(体積あたりの単価)でいえば丸太として売るよりも高くなるくらいだ。ただ、売り物として流通しているものは広葉樹の薪のほうがずっと多い。一般人が出品するフリマサイトでさえ広葉樹の薪が溢れていて、試しに出品してもそんなに売れなかった。針葉樹の薪だけで収益を得るのは、とても難しいことのように思える。

photo by Isao Nishiyama

最後に、他の誰かが使うけど薪を売りものにしない。つまり、“人にあげる”という選択肢。試しに作った30kgの薪は圧倒的にこの使い道が多く、キャンプが趣味の友人に喜ばれた。代わりに、使わなくなったキャンプ道具を譲ってくれたり、野菜をくれたり、山の活用に興味がある人と新しいつながりができたりした。「人にあげちゃう」という選択肢は、自分の中でけっこうしっくりきた。

いろいろ考えを巡らせた結果、「物々交換」のような仕組みで融通し合うような仕組みならアリだと思えた。モノでも情報でも、労働力でも人のつながりでもいい。むしろ、その人が何をもって“等価”だと感じてくれるのかを知ることで、また別の使い道がみえてくるような気がしている。

(あとがき)
こんにちは。
岐阜県の真ん中くらい、お茶の産地に実家がある“山主”です。

自分と同じように持ち山のある人、いまは実家を離れているけど、実家が「林家」に該当する方を想定読者としています。似たような境遇の方や、興味を持っていただける方と情報交換しながらやっていければうれしいです。

調べてほしいことなどあれば、メッセージをください。もちろん感想や質問などでも大歓迎です。

Instagram:@ymyse_525
Mail:yasueyuuma@gmail.com

安江 悠真 (やすえ・ゆうま)
岐阜県白川町出身。昆虫少年の延長で岩手大学の農学部に進み、林業と野生動物の関係を研究テーマとして、遠野市でクマを追う。現在は岐阜県に戻り、山の仕事をしながら実家と高山市を往復する日々を送る。