林業NOW
# 12
女性林業家たちの心奥 vol.2
悩ましきサイズ問題
2022.7.11

女性林業家の活動が少しずつ目に見えてきた昨今、「林業が気になる」と考える女性もにわかに増えているようです。しかし、まだまだ「男性仕様」の環境といわれる林業界。その実態を把握できず、飛び込むことをためらう人も少なくないのではないでしょうか。では、実際に山に入り、林業に従事する女性たちはどんなことに直面し、どう向き合っているのでしょう。今回は道具やウエアのサイズ問題について現場で働く女性たちに話を聞いてみました。

写真:西山 勲/文:松岡 真由美

ウエア、道具…
とにかくサイズが合わない!

身近な女性林業家の声で多いのは、「林業で使うもののサイズが合わない」という問題です。男性基準で決められている林業グッズのサイズ展開では、私たち女性の体にフィットするものが見つかりません。この現状は「快適に仕事をする」上で妨げになることでもあります。現場作業はとにかく過酷ですから、この問題も見過ごせないものです。

今回も前回同様、周りの女性林業家の声を聞いてみました。

《今回話を聞いた方》
●Aさん
・自営業(林業事業体勤務経験あり)
・現場作業担当(伐木、造材、集材、作業道開設など)
・経験年数4年
・滋賀県
・40代

●Bさん
・林業事業体勤務
・現場作業担当(伐木、造材、集材、作業道開設など)
・経験年数3年
・鳥取県
・20代

●Cさん
・自営業
・現場作業担当(伐木、造材、集材、作業道開設、特殊伐採など)
・経験年数2年
・高知県
・30代

●Dさん
・自営業(林業事業体勤務経験あり)
・現場作業担当(伐木、造材、集材、作業道開設など)
・経験年数2年
・岡山県
・40代

ーー 林業で使用する道具やウエアは男性仕様のサイズがほとんどですが、その上で何か困っていることなどはありますか?

●Aさん
まずはチェーンソーパンツですね。ほとんどは男性基準のサイズ展開だから、ウエストとヒップの比率が違って、ウエストに合わせると太ももが入らなかったり、逆にヒップに合わせるとウエストはゆるゆるだったり…。だから、私はサイズをあまり気にする必要がないチャップス(チェーンソーから身を守るためのウエア。ズボンの上から着用できる)を愛用しています。

防振手袋(チェーンソーの振動による障害を防ぐためのもの)は、S・M・Lのサイズ表記が男性基準であることを頭に入れておいて、「私は普段Mサイズだから男性基準だとSかな」というふうに合わせていかないといけません。

だから通信販売で使ったことのないものを購入するときは、合わないことを想定しておくか、現物が置いてあるお店が近くにあれば、試着してから購入します。

チェーンソーについては、女性が使うのにちょうどよいサイズのものを見つけるのが大変です。私は今、排気量42ccのものをメインで使っていますが、燃料満タンの状態だと重さが約5㎏。正直なところ私には重く、これだけで作業していたころは肩を痛めてしまったので、今は重さ3㎏のものと使い分けています。といっても、私は普通の女性より体格がいい方なので、これでなんとかできている感じです。

今、ボランティアで林業現場作業のお手伝いに来てくれている女性がいるのですが、私と同じ条件ではとてもお願いできないので、彼女が使いやすいチェーンソーを探しています。でも、軽量かつパワーがあるものは高価でなかなか手が出せないのが本音で、試行錯誤中です。

Aさんが愛用している林業用ウエアと道具。チャップスは〈OREGON〉、防振手袋・ヘルメットは〈ハスクバーナ〉、チェーンソーは〈ゼノア〉のアイテムを使用。
現場作業時は主に写真右のスパイクつきの地下足袋を使用。左の靴はAさんが重機等を操作する際に履く安全靴。

●Bさん
とにかくあらゆるもののサイズがありません。試着しようにも、小さめのサイズの現物を手にすることも難しいです。

チェーンソーパンツは、ウエストとヒップのサイズのバランスが合わなくて、結構困ります。私は骨盤が広い方で、女性用だとだいたいLサイズになるのですが、林業用のウエアをヒップサイズで合わせると、ウエストも大きいし、丈も長くなってしまって、なかなか体型にフィットするものは見つけられません。

私の足のサイズは23.5㎝なんですが、チェーンソーブーツ(チェーンソーから足元を保護するためのもの)は近場で購入できるお店では試着ができず、取り寄せてもらうなら購入しないといけない状況なので、いつも勘と運で乗り切っています(笑)。

チェーンソーは、ほとんど試していないので何とも言えないところもありますが、林業の世界に入ってすぐ、〈スチール〉〈ハスクバーナー〉〈ゼノア〉〈共立〉(この4つは林業用チェーンソーの代表的メーカー)のチェーンソーそれぞれのエンジンをかけてみて、唯一かけることができたゼノアのチェーンソーを使っています。女性に限ったことではないのかもしれませんが、チェーンソーはエンジンがかけられるかどうかという問題はあるのかなと思います。

※チェーンソーは、ひも状の「スターターロープ」を引くことでエンジンをかけることができる。このスターターロープを引く際に力を要する

Bさんの普段の作業スタイル。

●Cさん
チェーンソーパンツはとにかく大きめで、履かれている感が否めません(笑)。チェーンソーブーツの底が厚めな分、丈はそれで調整されている感じですね。自分のサイズに合うものは、なかなか見つけられていません。

チェーンソーブーツは、とにかくサイズの合うものが少なく、選択肢はほぼありません。そのため、少し大きめのものを、靴下やテーピングなどで調整して履いています。

チェーンソーは排気量42㏄(約5㎏)のものを使っていますが、はじめのころは本当にエンジンがかけられず、しばらく夫にかけてもらっていました。今では自分でもエンジンをかけられるようになりましたが、当初はエンジンをかけるだけで体力を消耗していました。もう少し排気量が少なくても、自分でエンジンをかけられるものを使えばよかったなと思います。

●Dさん
とにかくサイズが合わなくて困っているのは、チェーンソーパンツとチェーンソーブーツ。
チェーンソーパンツは、サイズ設定が男性基準なため、ウエストとヒップの差があまり大きくなく、体型になかなかフィットしません。なので仕方なくヒップが入るサイズで購入するのですが、ウエストが大きく股上が深いため、ベルトで絞めていても、作業中にズレてきたりして悩ましいところです。ズレると足が上げづらくなり、作業効率が下がるんです。

チェーンソーブーツも、私は足が小さめで(23.0㎝)、ちょうどいいサイズのブーツはほぼありません。そのため選択肢がなく、同じメーカーのものしか使えません。

チェーンソーは、今は排気量35cc(重さ約4㎏)のものを使っています。はじめのころは排気量50cc(重さ約5㎏)のものを使っていたのですが、エンジンがまったくかけられませんでした。しかも重く、取り回しも大変だったので、徐々に小さくしていった感じです。

Dさんが使用している林業用ウエアとチェーンソー。チェーンソーパンツは〈モンベル〉、ブーツは〈HAIX〉、チェーンソーは〈スチール〉。

女性林業家たちの声は
メーカーに届くか

現状、林業で必要なウエアやチェーンソーに関しては、女性林業家からはあまり肯定的な言葉は聞こえてきません。男性基準のものに女性が合わせていかざるを得ない、といった状況は、林業に従事する女性の割合が約6%(2015年時点)ということもあり、需要を考えれば仕方のないことなのかもしれません。

「サイズがなくても、せめて2~3メーカーまとめて試着できればと思っています」という声もあります。女性にもサイズが合う製品がすぐにできなくとも、現在の製品を試したい、という気持ちは大きいですね。

現場作業は体を動かすことが基本ですから、着心地、使い心地を確認することは重要です。自分に合ったものを使って作業することができれば、身体的、精神的ストレスは大きく緩和されます。

また、最近は女性用サイズに対応するメーカーも少しずつ増えていますが、サイズ表記をユニセックスにしてもらうだけでも、見つけやすさが違ってくるはず。

少数の女性林業家たちが少しでも楽に働けるように、メーカーにこれらの声が届き、より自分に合ったものを選びやすい環境になることを願います。

松岡 真由美 (まつおか・まゆみ)
大阪市出身。都会の人口密度に辟易し、岡山県の山奥へ移住。現在は夫と2人で林業を営みつつ、リモートワークでライターや事務の仕事をしている。林業の現場作業をしているくせに、運動神経が悪い。森や林業の現状をひろく知ってもらい、よりよい状況に進歩させたいと考える。