ひビキのヒび
# 16
木の棒を投げて競う
スポーツゲーム「モルック」
2021.11.5

制作の裏側や取材時の裏話など、編集部の日常をあれこれと綴っていく「ひビキのヒび」。先日、会社で運営している施設のレンタルグッズ撮影のため、フィンランド発祥のスポーツゲーム「モルック」で遊んでみました。

写真:編集部/文:高岸 昌平

シンプルな奥深さに
ハマる人続出

みなさんは「モルック」というフィンランド発祥の競技をご存じでしょうか?木製のピンを倒すボーリングのようなスポーツで、ルールはごくシンプルです。

ピンの倒す数によって得点が異なる。
複数本倒したとき:倒したスキットルの本数が得点
1本だけ倒したとき:倒したスキットルの番号の数が得点

基本的なルールは、「モルック」という棒を投げて、あらかじめセットされた木製のピン「スキットル」を倒していくというもの。先に50点ピッタリに到達した人が勝利をつかみます。ボーリングと違う点は、「倒れたスキットルは倒れた場所に立て直す」という点にあります。

モルックにはじかれ、遠くに倒れたスキットルはその場で立て直されます。つまり、投てきを重ねるにつれスキットルの位置が遠く分散していくのです。遠くに離れると高得点を狙うことが難しくなり、戦略が求められるので面白さも増してきます。

50点に揃えるために、遠くのスキットルを1本狙うこともある。

日本ではあまりなじみのないモルックですが、このスポーツが誕生したのは1996年のこと。フィンランドのカレリア地方の伝統的な「kyykkä」(キイッカ)というゲームを元に、フィンランドのTactic社が開発しました。母国フィンランドでは、サウナとビールを楽しみながらプレイするような気軽なスポーツで、誰でも簡単に遊べるシンプルさで老若男女問わず楽しまれているのだそうです。

岐阜県高山市の福祉施設とコラボして開催した交流会。70代の方や車椅子の方も、狙い通りにスキットルを倒して大盛り上がり。

そんなモルックをフィンランド文化とともに広めていくために、「日本モルック協会」という組織が国内で活動しています。協会のウェブサイトを見てみると、モルックの投げ方のコツはもちろん各地で活動されている団体の様子を知ることができます。日本各地で大会が開かれ、アジア大会まで開催されているというから驚きです。

ちなみに、“正式なモルック”はTactic社製の「Mölkky®」(正規品)を使用する必要があります。私たちの施設で使っているものは岐阜県産のヒノキを使った自家製の道具であるため、実際は“モルック風のゲーム”が正確な呼び方かもしれません。

ちなみに、“正式なモルック”はTactic社製の「Mölkky®」(正規品)を使用する必要があります。私たちの施設で使っているものは岐阜県産のヒノキを使った自家製の道具であるため、実際は“モルック風のゲーム”が正確な呼び方かもしれません。

力任せは逆効果
身体の軸を意識して投げる

ところで、「なぜ編集部はモルックで遊んでいるのか?」と思われそうですが、決して遊びではないのです。編集部にはモルックの写真を撮影するという任務が課せられていたのでした。

飛騨五木が運営する〈KAKAMIGAHARA PARK BRIDGE〉(KPB) のレンタル用品にモルックがラインナップされたのです。

さて、この日は比較的天気が良かったので、施設の隣にある公園の芝生広場にスキットルを用意してゲームスタートです。ゲーム開始直後はスキットルの位置も近く得点しやすいのですが、スキットルが散らばるとそうもいきません。程よく長さのあるモルックがラグビーボールのように不規則に転がり、思うように倒せないのです。

「はたして、どう投げればよいのか?」意外と頭を使うスポーツなのかもしれません。

身体の縦軸を意識して、脱力して投げるのが良さそうかも?

どんな方法でも棒さえ投げられれば、誰でも一緒に遊べるのがモルックです。力任せに投げても上手くいかないということもポイントで、体力に自信がない方でも楽しめる理由の一つだと感じました。

どうしても木材のことを
考えてしまう……

モルックの材料はフィンランドではおなじみの「シラカバ」という木。シラカバは日本でも北海道や東北、標高の高い地域に生息していますがその数は限られます。日本では、やはりスギやヒノキが一般的ですね。そんなスギ、ヒノキを素材にモルックを作り始める動きもあるのですが、公式大会ともなるとシラカバの木を使用した大会公式モルックが使用されます。一見すると、日本の木が入り込む余地がないように見えます。でも実際にモルックで遊んでみると、いろんな素材のモルックでプレイしてみたくなるものです。それはなぜかというと、スキットルやモルックの硬さ・重さがゲーム展開と安全性に大きく影響するからです。

KPBで貸し出すのは、ヒノキでできたモルック。お子さんが多く利用する施設にはピッタリ。

例えば、軟らかい素材のスギ・ヒノキであれば屋内のフローリングや壁を傷つけにくく、万が一人に当たってしまってもケガになりにくいということが期待できそうです。一方、とても堅い木であるイスノキ・黒檀などでモルックを作ってみると、また違ったプレースタイルが生まれてきそうだなと妄想が膨らみます。

スキットルを倒した時の高い音や堅い木同士が強く反発して、ピンが大きくはじかれる様子は今よりもスリルや迫力がありそうです。スキットルが大きくはじかれれば、ゲームの戦略性が増して、難易度も上がる。そんな階級別(樹種別?)モルックがあれば、パワー系モルックから、誰でも楽しめるモルックまで新スポーツのすそ野も広がるかもしれません。

スキットルを倒した時の高い音や堅い木同士が強く反発して、ピンが大きくはじかれる様子は今よりもスリルや迫力がありそうです。スキットルが大きくはじかれれば、ゲームの戦略性が増して、難易度も上がる。そんな階級別(樹種別?)モルックがあれば、パワー系モルックから、誰でも楽しめるモルックまで新スポーツのすそ野も広がるかもしれません。

2021年はオリンピックに新しく採用されたサーフィンや空手、スケートボードなど様々なスポーツが注目されました。モルックもこの先の盛り上がり次第では、オリンピック競技になる可能性も?まずは、2024年パリオリンピックに注目してみたいと思います。

高岸 昌平 (たかぎし・しょうへい)
さいたま生まれさいたま育ち。木材業界の現場のことが知りたくて大学を休学。一人旅が好きでロードバイクひとつでどこでも旅をする。旅をする中で自然の中を走り回り、森林の魅力と現地の方々のやさしさに触れる。現在は岐阜県の森の中を開拓中。