ひビキのヒび
# 14
休みの日まで働く!?
真夏の柿収穫
2021.9.24

制作の裏側や取材時の裏話など、編集部の日常をあれこれと綴っていく「ひビキのヒび」。とある週末、オンラインストアで販売している「柿渋」や「柿渋染めマスク」の生産者さんたちとともに、“柿渋をつくるための柿”の収穫をお手伝いさせてもらいました。その模様をご覧ください。

写真:編集部/文:田中 菜月

農家への転向がよぎる
収穫体験

響hibi-ki STOREで販売している柿渋商品を製造販売しているのは、岐阜県山県市(やまがたし)にある〈柿BUSHI〉です。市内の伊自良地区で生産される渋柿の品種「伊自良大実柿(いじらおおみがき)」を毎年夏に収穫し、原料にしています。

柿BUSHIの取材記事はこちら

収穫の人手が全然足りない!ということで、近年は柿BUSHIや「伊自良大実連合会」が中心となってボランティアを募り、地域内外の人が集って収穫を進めています。伊自良は私たち編集部が普段住んでいる岐阜市から車で30分ほどのところにあるので、「休みの日だけど、近いしせっかくだから収穫を体験してみたい」ということで、STORE店長の堀部さんと編集部の田中で参加することになったのでした。

大学時代から環境系のボランティア活動に勤しんできた堀部店長。畑仕事も大好きで、土壌医アドバイザーの資格も持っている。

朝から参加していた堀部店長は、私が昼過ぎにのんびり参加した頃にはベテランかのような雰囲気を放ち、柿を収穫していました。店長、柿農家に転職した方がいいかもしれません。

柿の実はヘタの付け根部分をくいっとひねると簡単に採れます。私も作業に加わってすぐにポンポン柿をもぎれるようになりました。私も転職しようか迷います。

この日参加していたボランティアは20名前後。禅の修行でもしているかのように皆さん無心で収穫に励んでいました。堀部店長も「没頭できたのが良かったし、スマホを見ようとも思わなかったのは久しぶりだった」と、無になれる心地良さを感じていたようです。「暑い暑い」とぶつぶつ言っていたのは、途中参加で体力が有り余っているはずの私だけだったのでした。やっぱり農家は向いていないのかも…。

身体への負担はあとから響いてくるもので、柿を収穫するときの上を向いた態勢が影響大でした。私は翌日起きたら背中がバキバキの筋肉痛で身体が動かせず、1日家でぐったり。実をもいでいくだけなら簡単でしょとなめていたのですが、予想以上の体力仕事だったわけです。「思っていた以上に一つの木に実がたくさんなっていて収穫するのが大変。腰につけたカゴもどんどん重くなって、はしごに乗りながら収穫するのも苦戦しましたね」と、余裕そうに見えた堀部店長も体力的にはかなりきつかったようです。

1日で収穫した柿は
約3トン!

さて、ある程度柿を収穫できたら軽トラに積んで柿畑から集積場所へ運び出します。

トラックの積載量を把握するため、ひとカゴ20㎏になるように一つひとつ計量器で計りながらトラックに積んでいきます。これを繰り返すうち、20㎏の重さが感覚的になんとなくわかってくるのが面白いところです。

最終的に1日で約3トン収穫できました。これをすべて絞ると、使える部分は全体の40%くらいなんだそうです。仕方ないけどちょっと切ない…。でも、トラックいっぱいに積まれたカゴを見ると満足感もありました。普段パソコンと向き合う仕事をしていると味わえない気持ち良さです。このあと柿はトラックで工場へ運ばれ、柿渋に加工されていきます。

柿を収穫して、重さを計って、トラックに積んで、と、ボランティアの人たちが手伝うのはここまで。あくまで整えられた作業内容で、これ以外にも地元の方たちははしごやカゴなどの道具類を片づけたり、収穫用に切り落とした枝葉をトラックに積んで一か所に集めたり(後日燃やさなきゃいけない)、雑多で細々とした仕事が残っています。私と堀部店長はたまたま時間に余裕があったので引き続き残って少し手伝っていたのですが、お膳立てされた収穫体験だけでは見えなかったものがちょっとだけでも見えたのは良かったなと感じました。

1日がっつり野良仕事をするのは確かに大変だろうとは思いますが、そのあとに飲むビールは格別においしいはずです。途中参加だった私ですら帰宅後に缶ビールをごくごく飲み、22時にはぐっすり就寝。インドア派な人間でも、たまには外で身体を動かすのも悪くない!と思えた1日でした。来年の収穫も参加したいと思います!

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田中 菜月 (たなか・なつき)
1990年生まれ岐阜市出身。アイドルオタク時代に推しメンが出ていたテレビ番組を視聴中に林業と出会う。仕事を辞めて岐阜県立森林文化アカデミーへ入学し、卒業後は飛騨五木株式会社に入社。現在は主に響hibi-ki編集部として活動中。仕事以外ではあまり山へ行かない。