ひビキのヒび
# 12
公園施設のオープン
そして入社式
2021.4.16

制作の裏側や取材時の裏話など、編集部の日常や会社のことをあれこれと綴っていく「ひビキのヒび」。今回は新しい春の風が舞う、会社全体の近況報告です。大きな公園施設がオープンしたり、入社式があったりと、山の植物や生き物が動き出すように、響hibi-kiを運営する飛騨五木グループも芽生えのシーズンを迎えました。ここに書き留めなければ消えゆくであろう舞台裏はいかに?そのわずかな記憶を綴りました。

写真:編集部/文:田中 菜月

官民連携で実現した
屋根のある公園!?

例年より開花の早い桜が満開に近づく3月27日(土)、岐阜県各務原市に公園施設〈KAKAMIGAHARA PARK BRIDGE(KPB)〉がオープンしました。企画から建設、運営までを飛騨五木グループ内で行っています。

KPBの2Fにある「雨音テラス」。吹き抜ける風が心地良い。

KPBは隣接する2つの公園「学びの森」と「市民公園」をつなぐ新しい遊び場です。施設内にはのんびりくつろげる広場やテラス、地元で人気の3つの飲食テナント、有料エリアには巨大な木製遊具や工作スペースがある「遊び創造labo」、外の公園で使えるテントやイスの貸出など、さまざまなコンテンツがつまっています。

KPBホームページ

施設内の2階部分に張り巡らされたネットは、ダイブするとより楽しい新感覚の遊具。

施設内は子ども向けの遊具類がメインになっていますが、子どもやファミリーだけの場所というわけではありません。KPBでレンタルしたイスに座って公園でのんびり読書したり、ランチやドリンクをテイクアウトして芝生でピクニックをしてみたり、KPBと周りの公園を自分なりにアレンジして活用することで好きな過ごし方を見つけ、自由気ままに過ごすことができます。近所にこういう場があったら休日の楽しみが増えていいなあとうらやましく思うほどです。

そんなKPBですが、これは飛騨五木グループだけで成しえた事業ではなく、「Park-PFI」(※)制度を活用し、各務原市と官民連携することで誕生しました。

※「Park-PFI」(公募設置管理制度)とは、民間の力を活用した都市公園の整備・管理手法のこと。公園の利用者にとってより快適な空間となるよう、公園内の環境整備から日々の管理まで一体的に行う事業者を公募により選定する制度。

さらに運営には、地元のクリエイターなどが集う市民団体「一般社団法人かかみがはら暮らし委員会」も加わり、私たちだけではできないようなイベント企画やコンテンツの提供を担ってもらっています。建物は建てたあとどう使い方をアップデートしていくかが課題になりますが、KPBは企画やテナントに市民が参画し、運営の私たちも地元に軸足を置いた民間企業です。市民・地元目線での運営を意識している点もKPBの特徴の一つになっていると感じています。

すでに地域の多様なプレーヤーが関わっていますが、今後もさまざまな人を巻き込みながら、新しくておもしろい公共空間づくりを目指していきます。

●KPBのプレスリリース資料はこちら
https://goboc.jp/wp/wp-content/uploads/2021/03/0608039f2150c7c8613aa58ae6b18178.pdf

全社員を巻き込んで
0からつくる

KPBの取り組みがはじまったのは、計画段階を含めると2019年の冬頃です。施設のコンセプトづくりや配置・収支・運営計画を取りまとめて提案書を提出し、各務原市からの認定を受け、本格的に事業が走り出しました。施設のオープン予定が2021年3月なのに対して、計画認定日は2020年2月。約1年で完成させなければいけいない、かなりタイトなスケジュールです。

さまざまな工程を経て準備が進められていきました。建物の詳細な設計や構造計算、行政への申請、必要な木材の伐採、製材、乾燥、大工さんによる墨付け刻みや木工事、現場監督による施工管理、資金調達やテナントさんとの折衝など、正直、私も把握できないほど多くの人が関わっています。すべてを理解しているわけではないですが、グループ内で一気通貫して取り組んでいるため、こうした巨大な施設が完成するまでにいかに膨大な労力がかかっているかということを肌で感じることができ、自分自身にとっても社会勉強になりました。

衝突防止用に窓ガラスに貼るための“オノマトペ”ステッカーを作成する、響 hibi-ki STORE店長の堀部さんと編集部の高岸くん。
言葉をどのように表現するか考えながらステッカーを貼付。

建物がある程度できてくると、室内の細かい装飾や備品の購入・配置、ホームページの作成やSNSの更新など細々とした作業を進める段階になります。オープンが近付いた頃には編集部の私たちや他事業部のメンバーも準備に加わり、飛騨五木グループの社員を総動員させて完成に漕ぎつけました。

こうしたロゴやHP、掲示物などの制作は響hibi-kiのイラスト制作も担当してくれている天才デザイナー・伊藤さんがすべて手掛ける。
プレオープン時に取材対応するサービスデザイン戦略部の渡邊さん。KPBのコンセプトづくりから準備まで携わる“KPBに一番詳しい人”。響hibi-kiでも企画やInstagramの更新を担当してくれている超絶ハイスペックな部長!
運営スタッフの森内くん、可奈さん、長谷部さん(左から)。森内くんは最新のソフトウェアや数字管理に強いミニマリスト、可奈さんはKPBの日々の運営を担当しユニークな企画立案を得意とするイベントプランナー、長谷部さんは森林文化アカデミーで森や木について学んだ期待の新人!

社員から見ても「とんでもない木造空間ができたな」と感じていますが、それは、ここで取り上げきれないほどの人々のエネルギーが注がれてきたからなのではないかと思います。莫大な物資や労働力が投入されたであろう東大寺の大仏を見て、誰もが圧倒されるのと近い感覚です。だからこそもっと詳しくKPBのことを紹介したいところですが、長くなりそうなので今回はここまで。また別の記事で建物や空間づくりのこと、今後のイベントなどを取り上げていきます。

今年は6名が
加わりました!

3月27日(土)のKPBオープン日以降も運営スタッフとしてサポートに入り、さすがにクタクタになる中、次なるミッションが舞い込んできました。新入社員を迎えるビッグイベント・入社式です。式は4月1日(木)でしたが、希望者は前日から社内の自然エネルギー事業を見学するということで、私がアテンドすることになりました。新入社員を引き連れて、岐阜市から高山市へ2時間ほどかけて車を飛ばします。

小屋の中に小水力発電の発電機がある。山の斜面を縦断する配管は、奥のスキー場から山水を引き込むためのもの。

現地では、グループ会社である「株式会社井上工務店」の正博社長と、自然エネルギー事業を主に担当する山口さんから小水力発電の仕組みをレクチャーしてもらいました。初めて目にする発電施設に興味津々の新入社員たち。

中央の機械が水車(青い部分)と発電機(赤い部分)。水の力で水車の羽が回り、電気エネルギーが生み出されます。

この小水力発電の事業では、木材生産以外の形で山全体の価値を上げ、森林所有者に利益を還元していくモデル構築に挑戦しています。新入社員は直接的に関わるわけではないですが、各自が今後の担当業務とのつながりを探りながら話を聞いている姿が印象的でした。

小水力発電はこれからの森林業界を変革する可能性を大いに秘めているので、いずれ詳細な記事を書いてみたいと思っています。が、仕組みなどをしっかり理解できずにいるのでもう少し勉強してから臨むつもりです!

そして、この事業が回っているからこそ響hibi-ki編集部が存在できているとも言えます。それゆえに、私たちメディアは小水力発電事業の理念にもつながる、山や地域の価値を底上げするような情報発信をしていかなければならない、と改めて思ったのでした。

翌日の入社式では、辞令の交付や会社概要の説明が行われました。

現在御年86歳?の会長を中心に建てられた宗猷寺の庫裏。樹齢数百年の貴重なケヤキが梁や床板に使われた圧巻の木造。
現場監督からも工事の苦労を聞かせてもらった。

高山市内の施工物件もいくつか見学し、寺社仏閣などの厳かな建造物からモダンなオフィスまで幅広い建築を生で体感してもらいました。飛騨五木グループは活動拠点が多岐に分かれるため、全社員が一堂に会する機会はめったにありません。これまで年に1度は高山で集まることもありましたが、現状では次に会えるのはいつになるかわからない状況です。結果的に数少ない社内交流の場にもなりました。

まだまだコロナの影響が残る中、新たに集客施設を運営し、人員も増やすという決断は少しハラハラしますが、先が見えない状況でも“まずはやってみる”の会社精神が表れているなとも思います。そんな飛騨五木グループを2021年度もよろしくお願いします!

田中 菜月 (たなか・なつき)
1990年生まれ岐阜市出身。アイドルオタク時代に推しメンが出ていたテレビ番組を視聴中に林業と出会う。仕事を辞めて岐阜県立森林文化アカデミーへ入学し、卒業後は飛騨五木株式会社に入社。現在は主に響hibi-ki編集部として活動中。仕事以外ではあまり山へ行かない。