Forest Shutter 森の暮らし
# 15
農と暮らしが繋がる
里山での暮らし
古松信彬・義彬の場合
2023.12.4

森と共に暮らす人々の日常をフィルムカメラで切り取る「Forest Shutter」。連載第15回目は、岩手県花巻市で「ふるまつ自然農園」を営む、双子の古松信彬・義彬さん。農と暮らしが繋がる「パーマカルチャー」を実践するふたりは、畑だけでなく、山や森にも密接に関わる暮らしを行っているそう。

写真・文:宮本拓海

僕たちはパーマカルチャーを実践しながら、作物を育て、販売する農業を仕事にしています。岩手に住み始めたのは、2021年。少しずつ育てられる作物も増えてきて、今はつながりのある個人や飲食店に卸したり、マルシェなどに出店して穀物や野菜の販売をしています。

出店するときは、軽トラに荷物を詰め込んで向かう。この前、東京のイベントに参加するときもこの軽トラで行ったんです。里山暮らしの中では必需品で、本当に重宝しています。

岩手県内なら、収穫してすぐこの軽トラに作物を積んで届けに行けるから、農家が自分の家で食べるくらい、鮮度のいい状態で食べてもらうことができます。これからは育てた作物がもっと地域の中で循環できるように、この土地の人に食べてもらう機会を増やしていきたいです。

人が関わることで、
自然が豊かになる

住んでいる家は、耕作放棄地つきの空き家として売り出されていた場所。そこを少しずつ整えて生活しながら、畑や田んぼで農作物を育てています。

寒くなってきた時期から大活躍するのが、薪ストーブ。家の中にふたつあって、暖を取りながら、煮炊きできるのがとても便利。自然の資源を使うという意味でも、薪ストーブがあるのは本当に豊かだと思う。家の裏山の木を適度に間伐して、それを燃料として使っています。

空き家だった期間が長かったから裏山が荒れてしまっていて、そこを自分たちで少しずつ整備しています。まずは、自分たちが入れるように道をつくるところからスタート。切った木を一本ずつ運んで薪にしていたけど、それでは長く続けられないから、道を広げて今は運搬機が入れるくらいの幅に整備できてきました。

自分たちがここに暮らすことで、少しでも自然が豊かになっていくのはすごくうれしいこと。

農と遊び、暮らしがひとつになる

今年の秋は、裏山で栗がたくさん採れました。山は、薪にする木のほかに、農作物を干すための支柱として竹を採ってきたり、山菜やきのこ、栗を拾ったり、自然の恵みを受け取れる場所。食材探しや材料調達のほかに、沢水を引いて使っているので、山には定期的に入っている。暮らしの中で、山や森に入るのは欠かせない作業のひとつです。

僕たちがパーマカルチャーの考え方を尊重しながら目指しているのは、農と遊び、暮らしがひとつに繋がって、循環していくような生活。今でも実現できているところがあって、その状況がとても心地いい。

農業は仕事でもあるけど、自分たちにとっては、遊びでもあるし、生活の一部でもある。それは山に入って、木を切ったり、山菜を採ったりするのも同じ。こうした暮らしを求めて、里山のこの家で暮らしています。今の状態が、自分たちのスタイルそのもので、楽しいなと思えているからこそ、この暮らしを持続させていけるなと思うのです。

自然と人が関わる境界になっている里山は、とても豊かな場所。自分たちが快適に暮らしている場所から、少し歩くと天然の資源がたくさん。僕たちがここに住んでいることで、いろんな人にこの土地に訪れてもらいながら、一緒に自然を豊かにしていくような、遊びや暮らしが続けていけるといいなと思います。そして、人が関わることでより、自然が豊かになっていく暮らしを実現したいと考えています。

宮本 拓海 (みやもと・たくみ)
1994年生まれ。岩手県奥州市出身。2019年4月から企画・執筆・編集を行うフリーランスとして活動。その他、Next Commons Lab遠野ディレクター、日本仕事百貨ローカルライター、インターネットメディア協会事務局などを務める。将来の夢は、奥田民生のように生きること。