Forest Shutter 森の暮らし
# 17
四季とともに変化する
山とかかわる営み
藤原隼の場合
2024.5.28

森と共に暮らす人々の日常をフィルムカメラで切り取る「Forest Shutter」。連載第17回目は、岩手県西和賀町に工房を構え、木製のカトラリーやランプシェードなどの制作を行う〈waranoue〉の藤原隼さん。日常的に木に触れ、山に関わる藤原さんが語る森の生活。

写真・文:藤原 隼

普段は岩手県西和賀町で、主に広葉樹を材料に、木の器やカトラリー、ランプシェードを制作している。

西和賀町は自分が生まれた場所で、4歳まで過ごしていた。親の仕事の都合で引っ越しをして、一度離れてしまったけど、西和賀には毎週末通っていて、祖父の仕事を手伝ったり、野山で遊んだりしていた。

木工を知ったのは、2011年に本を読んだのがきっかけ。もともとものづくりは得意じゃなかったけど、なぜか興味を持って、本に書いてあるとおりに、スプーンや豆皿を作ってみた。やってみるとおもしろくて、すっかりハマってしまい、興味を持って色々調べていたらネットで生木から木の器をつくっている人を見つけた。

それから道具を買って、生木を材料にした器づくりを実家の部屋の中でこもって作業するようになったけど、だんだん手狭になってきて。西和賀の祖父の家が空いているからと、2017年に引っ越して、妻と子どもと生活しながら、〈waranoue〉という屋号で木の器づくりをしている。今工房として使っているのは、もともと祖父が納豆をつくっていた倉庫だ。

四季と自然の変化に
合わせた仕事と暮らし

西和賀町は幼い頃からの遊び場だった。楽しかった思い出ばかりで、今もその遊びの感覚は抜けていない。生活も仕事もすごく遊びに近いイメージ。自然が豊かな西和賀町の環境がすごく好きで、自然の変化に合わせた暮らしをしている。

木の器づくりは4月から12月までの間に行っていて、西和賀町は豪雪地帯で冬の間は仕事ができないから、雪が積もっている間は郵便配達の仕事をしている。ほかに、春はわらび採りのバイトをしたり、夏は草刈りをしたり、季節に合わせた仕事をすることも多い。

木の器づくりは自分で木を切り出してくるところから始まるので、山に入る機会がすごく多い。僕はものづくりよりも、山に入っていく行為がすごく好きだ。

山には、木を切りに行くときもあれば、山菜を探しに行ったり、きのこを採りに行ったりすることもある。

家には薪ストーブがあって、器をつくる過程ででた端材を薪として使っている。制作した器やカトラリーは家族と一緒に自分でも使っていて、仕事も暮らしも、山の幸をたくさん受け取っている感覚がある。

山と密接に関わるからこそ、
同じことの繰り返しはない

西和賀町も、他の地方と同じように人口減少や少子高齢化が問題になっている。これまで地域のおじいちゃん、おばあちゃんが管理してきた山や畑を「譲るよ」と声をかけてもらうこともあって、親戚や知り合いの山に入って木を切りに行くことも増えてきた。

問題は問題でもちろん大変だけど、それを逆にチャンスと捉えると、自分も含めてこれから新しく山仕事を始めようとする若い人にとっては、西和賀町はすごくいいところだと思う。地域の人たちもやる気ある若者には協力的だし、杉よりもミズナラ、コナラ、クルミ、クリ、山桜、ホウノキなど広葉樹が多くて、山の資源が豊富にあるから、改めて本当にいいまちだなと思う。

仕事でも暮らしでも、山と密接に関わるからこそ、生活の中で同じことの繰り返しが全然ない。僕にとっては、同じことを繰り返すのは苦痛でしかないから、それがすごく魅力的に感じている部分。

晴れの日もあれば、雨の日もある。二度と同じ状況は起こらない。その中で自然と人間が関わる。その行為を楽しんでいる様子を、この西和賀町から広げて、多くの人に伝えていけたらいいなと思っています。

宮本 拓海 (みやもと・たくみ)
1994年生まれ。岩手県奥州市出身。2019年4月から企画・執筆・編集を行うフリーランスとして活動。その他、Next Commons Lab遠野ディレクター、日本仕事百貨ローカルライター、インターネットメディア協会事務局などを務める。将来の夢は、奥田民生のように生きること。