杉センセイの生物図鑑、 知らんけど
# 15
ヤマガラ/スズメ目シジュウカラ科
冬に備え貯食する鳥
2022.11.1
photo by Ik T

秋が深まるとリスなどの小動物が冬に備えて木の実などを貯食行動するイメージがありますが、実は鳥も同じような行動をします。その代表的な鳥がヤマガラです。ヤマガラは一年中観察できますが、季節の変化とともにその生態も変わっていきます。鳥好きな杉センセイにヤマガラのあれこれを聞いてみました。

 

文:重太郎

ヤマガラって
どんな鳥?

この前山を歩いていたら、スズメぐらいの大きさで、オレンジ色っぽい鳥がせっせと木の実をどこかに運んでいるのを見かけました。なんていう名前の鳥かわかります?

お〜!それはヤマガラかもしれへんな。

ヤマガラですか!? どんな鳥なんですか?

photo by Ik T

ヤマガラは、背とお腹の赤茶色が特徴的で、日本では一年中観察できる鳥やな。春から夏にかけて昆虫なんかを食べるんやけど、秋頃になると木の実を探しはじめるんやで。

へえ〜。季節によって食べ物が変わるんですね!

エサが少なくなる冬に備えて、木の実を隠しとくらしいわ。隠し場所は木の幹や樹皮の隙間、倒木などの隅。土の中に隠すこともあるんやて。

ヤマガラはなんの木の実を集めているのですか?

どんぐりとかエゴノキの実が好きらしいわ。

エゴノキってあまり聞いたことないですね。

エゴノキは和傘のロクロなんかに使われる木なんやけど、この木の実を食べることができるのはヤマガラの特徴なんやで!

どうしてですか?

他の鳥はエゴノキの実を食べへんねん。「エゴサポニン」っていう毒が実に含まれとってな、人間でも腹痛や蕁麻疹を起こすくらい強力なんや。

人にも危険があるくらいの毒なんですね…!でも、なんで毒があるのに食べられるんですか?

ヤマガラはエゴノキの実の果肉を両足で挟んで、クチバシで突いて割って、毒がない種だけを器用に食べることができる。とんでもなく固い実なのになあ。人間だとふぐ調理師免許がないとふぐを捌いて食べられないように、森の中ではヤマガラにしかエゴノキの実を扱うことができないということやろうね。他の鳥には危険で食べ方がわからないから、ヤマガラはこの実を独り占めできるっちゅうわけ。

そのエゴノキの実をどこに隠したかも、ちゃんと覚えているものなんですかね?

ヤマガラは学習能力や空間記憶能力が高くて、どこにエサを隠したかほとんど記憶していると言われとるよ。わしもそんな能力ほしいなあ。

ヤマガラってすごいなあ~!それにしても、どうやって場所を覚えているんですかね?

場所そのものよりも近くの目印になるものを記憶しているらしいことが実験を通じてわかっとるみたいや。

へえ~!割と人間みたいな覚え方するんですね。でも、エサの隠し場所を覚えていても、貯食した全部の実を食べられるわけじゃないですよね?

忘れられた種子はその場所で芽を出すから、樹木にとってはうれしいことなんよ。だから、すべて実を食べ尽くさない方がいい側面もあると言えるな。ヤマガラの貯食行動は生態系の循環に欠かせないんや。

ヤマガラは
種の壁を越える

そういえば、ヤマガラがいろんな鳥と一緒にいるところを見かけました。同じ種類だけで行動するわけじゃないんですね。

冬になるとシジュウカラやメジロ、コゲラ、エナガなんかの小鳥と一緒に群れをつくるみたいやわ。

photo by Ik T

違う種類の鳥同士でも仲良くなることがあるんですね!

こういう鳥たちの行動を「混群」ていうんやで。覚えときや。

なんでそんなことをするのですか?

それぞれの特性を活かして、みんなで協力して暮らすこともあるらしいわ。冬は木の葉が落ちて天敵にみつかりやすくなるから、お互いで知らせ合ったり、エサ場を教え合ったりしてるんやて。

すごい!一つのチームみたいですね。

ヤマガラは社会性が高いから、よく人に懐く鳥としても知られとる。山で見かけたときに気に入られれば仲良くなることができるかもしれへんね。

面白い生態を持っているんですね。山に行ったらヤマガラをますます見つけたくなりました!

秋は野鳥を見かけやすくなるから、普段とは違う面白い行動を観察できるかもな。しかも、貯食をするのはヤマガラだけじゃないから、身の回りをよく探してみるとエサの隠し場所が見つかるかもしれへんね、知らんけど。

《杉センセイまとめ》
・ヤマガラは冬に向けて貯食行動をする
・食べ切れなかった実は種子散布に役立っている
・冬になると他の種の鳥と混群をつくることがある

●参考文献
・中野さとる『にっぽんのスズメと野鳥仲間』
・柴田佳秀『散歩道の図鑑 あした出会える野鳥100 』
・サントリー「愛鳥活動」日本の鳥百科
https://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/4085.html

重太郎 (シゲタロウ)
神奈川県出身。現在は名古屋を拠点にメディア関係で活動中。カッコウの托卵に衝撃を覚え、文系気質だった学生時代とは打って変わって、大人になってから鳥の生態への興味があふれ出す。読書/動物のガチャガチャ集め/1杯目のビール