林業NOW
# 6
林業のがっこうへ
行こう
2021.2.12

森林・林業分野の情報が詰まった「森林・林業白書」を紐解いてゆくこの連載ですが、今回は、“林業のがっこう”について。本格的に林業を学びたい、でもどこから手をつけていいのやら……、もっと気軽にチャレンジしてみたい……などなどいろんな方々へ。編集部が独自に調べた情報をもとに、“森への道”を指南します。

写真:西山 勲、編集部/文:高岸 昌平

林業を学べるところって
どんなとこ?

林業を学ぶ場とは、具体的にどんなところでしょうか?「森林・林業白書」(平成30年度版)の34ページを開いてみると、「森林・林業に関する高校・大学の教育」という項目で教育機関について触れられています。高校では72校が森林・林業に関する科目コースを設置しており、大学では28校が森林・林業に関する学科を設置しています。

「森林・林業白書」の該当ページ

他にも国や自治体が開催する短期の研修や講習会、近年増加している林業大学校などで学ぶことができます。このように林業の学びにはあらゆる形があります。一方で、林業のはじめ方として、必ずしも学校を通る必要はありません。その前提で、学校に通いたいという方に向けて、情報を整理してみます。

編集部の田中が岐阜県立森林文化アカデミーに在学していたときの一コマ。丸太の輪切りの年輪から伐採前の樹形を探る「樹幹解析」に挑戦中。

少し脱線しますが、高校や大学以外の林業系教育機関には「○○アカデミー」「○○農林学校」など、さまざまな名前がつけられています。その違いとは何なのでしょうか?独自に分類してみました。

林業系学校の種類は大きく4つに分けられます。

1つ目は「大学」です。農学部などの中に森林系の学科がある大学が該当します。学べる内容は大学によってまちまちですが、多くは技術を身につけるというより研究に重きを置いています。次世代林業の確立に向けた研究や新たな木材利用法の開発など、より高度な学びが求められます。

2つ目は「専修学校」と呼ばれるもので、学校教育法の第11条で定められている教育施設のことです。国の奨学金を借りることや3年次編入で4年制大学へ編入することもできます。

3つ目は、「各種学校」です。自動車教習所や予備校などもこのジャンルに入ります。こちらも法律で定められていますが、認定要件が緩いためか一般的には学歴として認められないこともあるようです。

上記3つに当てはまらないものは、「研修施設」として4つ目のカテゴリーに分類するとします。このカテゴリーが林業系学校の中で一番多い形態です。それぞれの目的に合わせた研修が開講されており、研修期間は数日から1年までと多様です。施設の名前だけでは見分けられないので、事前にしっかり確認し、目的に応じて選択することが大事です。

林業の学校を選ぶ
3つのポイント

色んな種類の学校があることは分かりましたが、数ある教育機関のうち、どこが自分にとってベストなのか判断することは簡単ではないでしょう。そこで、学校を選ぶときに押さえておきたい3つのポイントを紹介します。(大学は除く)

《林業の学校を選ぶ3つのポイント》
・修学期間
・暮らしたい地域
・学費・給付金

ポイント1は、“修学期間”です。

基本的に修学期間は1年もしくは2年のいずれかになります。どちらとも、実習を多く取り入れている学校が多いです。1年制の学校では、基礎的な知識や技術の習得、必要な資格取得に力を注ぐ傾向があります。

アカデミー在学時に学年・学科を超えて炭焼きの窯をつくったときの一枚。

それに対して2年制の学校では、カリキュラムの充実さに加えて、文化祭や学生同士での交流も活発なようです。狭い業界の中で楽しいことや不安なことも共有できる仲間がいるのは心強いことだと思います。

ちなみに、学校によっては数日~数か月の短期コースも開催されています。学校以外にも各自治体が開く林業の講習会もあります。時間もお金もかけずに最低限のスキルを身につけたいという方には向いているかもしれません。しかし、実際は経験者のスキルアップのためや、地元の山林所有者向けに開講されていることが多いようです。

ポイント2は、「暮らしたい地域」です。

林業の場合、卒業後の就職先を選ぶうえで“在学している学校の所在地”がポイントになります。就職活動のときに学校の存在は頼りになりますし、学校が地元の事業体とつながりが強いのは事実でしょう。特に自治体が直接運営しているところでは、その傾向が強いと思います。だからこそ、卒業後も含めて、自分がどのように暮らしたいのか想像しながら地域を選んでみてください。

ポイント3は、“学費・給付金”です。

学校への入学を検討する際、学費や生活費をどうするかは見過ごせないポイントです。無料で研修が受けられるところもあるようなので、そういった場を利用するのも一つの手です。

また、実費負担のみで学べる施設もあります。しかし、タダほど怖いものはないとはよく言ったもので、条件として住民票の移動や修了後の就業地域を限定している場合があります。慎重に見極めたいところです。

学費とは別に給付金の制度もあります。「緑の青年就学準備給付金」という林業従事者向けの支援制度で、研修終了後に林業への就業が求められますが、入学前から林業の道へ進む決心がついているのであれば使わない手はありません。他にも、学校が独自に奨学金を出していたり、それぞれの自治体から給付金の制度があったりするので、あらかじめ入念にチェックしておくことをおすすめします。

上の表は全国にある23の林業系学校(大学を除く)をまとめ、項目ごとに比較できるようにしたものです。先ほどあげた3つのポイントと合わせて、学校選びの参考に活用してみてください。ちなみに、ここであげている学校以外にも市町村レベルで一般向けに伐採等の研修を行っている地域もありますので、気になる地域があれば調べてみるといいでしょう。

学びたいけれど、ある程度収入も必要だという方は、“地域おこし協力隊”という選択肢もあります。林業の技能研修と仕事がセットになっているので、学びと実践を同時並行で進めることができます。その後の道は、就職や起業などさまざまです。各地の自治体で林業分野の協力隊員を募集していますので、それぞれのホームページから探してみてください。

ここで取り上げた“林業の学校の選び方”は、あくまで編集部独自の提案ではありますが、悩んでいる方の参考として少しでも役立てられれば幸いです。ところで気になるのは、学校を出たあとの進路です。どんな将来像が描けるのでしょうか。次回は、そのあたりの具体例をいくつか取り上げてみたいと思います。もしかすると、林業ではない道も見えてくるかもしれません。

高岸 昌平 (たかぎし・しょうへい)
さいたま生まれさいたま育ち。木材業界の現場のことが知りたくて大学を休学。一人旅が好きでロードバイクひとつでどこでも旅をする。旅をする中で自然の中を走り回り、森林の魅力と現地の方々のやさしさに触れる。現在は岐阜県の森の中を開拓中。