いつもは木材にまつわるルーツを辿ることが多いですが、たまには、そうでないジャンルの原点にも触れてみたいと思います。今回は、響hibi-ki STOREの実店舗で好評のオリジナルおやつ「もぐもぐあられ」の製造を担当してくださっている<丸幸製菓株式会社>の工場を訪ねました。
家族みんなで食べても
1人で食べても好きな味に出会える!

今年の春から販売が始まった「もぐもぐあられ」は、ベースとなる丸い小粒あられを中心に、ごま・梅ざらめ・ざらめ・のり巻のあられが1つずつ入った特別仕様となっています。家族みんなで食べても、1人で食べても好きな味に出会えるように、色んな味や形のあられが楽しめる内容に仕上げました。100%国産米のちょっぴり贅沢なあられは、手土産にもおすすめのおやつです。
●もぐもぐあられ
https://www.instagram.com/p/DNUVjGhRSrk/?img_index=1

さて、丸幸製菓さんの工場を訪れたのは、8月上旬。外にいるだけでも猛暑でへばってしまいますが、「工場の中はもっと暑いですよ。一瞬で汗だくになります」と同社を案内してくれた専務取締役の宮部有子さんが、念押しするように伝えてくれました。

恥ずかしながら、現地に来るまで、あられがどうやってつくられているか想像すらしていなかった筆者は、何も考えていない格好で来てしまったことに後悔しつつ、一度は肌で体感してみたいと工場の中を見学させてもらいました。
製造工程ではまず、原料のもち米を一晩水に浸けるところから始まり、機械でもち米をついて餅を作り、冷やし固めていきます。固めた餅を機械でカットし、成形、乾燥させます。焼きの工程で火を使うため工場内の温度はぐっと上がります。最後に味付けと選別をして、あられの完成です。できあがるまでに約1週間かかります。
気温や湿度によって生地の仕上がりが変化するため、毎日の微調整が肝心なのだそうです。自然素材を扱っているからこその難しさなのでしょう。ある程度機械化された流れ作業とはいえ、細やかな気配りができる人間の感性が欠かせません。
同社の従業員数は約40名で、そのうちのほとんどの方が工場内で勤務しています。最高齢はなんと76歳!「工場の中は高温になるので夏は大変なんですが、従業員のみなさんがよく働いてくださってありがたいです」と、取材中に有子さんが何度もおっしゃっていたのが印象的でした。
工場直売が縁を結んだ
あられとの出会い
ところで、響hibi-ki STOREでオリジナルのあられをつくることになったのは、マルシェに出店していた丸幸製菓さんとの出会いが始まりでした。何よりあられが美味しかったこと、店長があられ好きだったこと、そして丸幸製菓さんの雰囲気に惹かれて、コラボ企画が進んでいきました。

もともとは卸専門だった同社が、自分たちでつくったあられを、自分たちで販売するようになったのは、2年ほど前からのことです。コロナ禍の影響であられの自販機を始めたことが一つのきっかけとなりました。


先代のころから自社ブランドを立ち上げることは考えていたそうですが、実現には至っていませんでした。しかし、その役割を3代目社長の妻である有子さんが引き受けたことで、丸幸ブランドが前進していきます。
「あられって年配の方がお茶うけに食べるイメージがあると思うんですけど、小さいお子さんでも食べられるおやつなんです。もっと色んな人に手に取ってもらいたいなと思って、ポップなデザインの自社ブランドにしようということになりました」


ロゴやパッケージデザインはもちろん、あられ自体も、鮎型のものやハロウィン仕様のものなど、ユニークな商品が少しずつ増えています。そうした新商品開発を担うのは、同社の社長です。
「社長は“あられオタク”みたいな人で、毎日コンビニへ行って、あられを買ってくるんですよ。たぶん研究もあるんだけど、コンビニって新しい商品が入れ替わり出てくるから純粋に楽しいみたいです。このあられの生地に対して味の付き方が美味しいとか、これは生地と味が合ってないとか。自分なりにいろいろ考えて形や味付けを開発するのが面白いみたいです」
その中で、一風変わったあられが誕生しました。「まさか本当に商品化するとは思わなかった」と有子さんが話すのは、ラムネ味のあられです。


実際に食べてみると、確かにラムネの風味がしました。だからなのか、ベースはあられなのに、また別のお菓子を食べているような不思議な感覚が楽しめるあられです。
新商品を開発する際は、宮部夫妻の3人のお子さんや従業員の方々が試食し、納得のいく仕上がりになるまで試作を繰り返します。試作で終わってしまうことの方が多いそうですが、そんな手探りのブランディングが楽しいと有子さんはにこやかに話します。
「自分たちが美味しいと思えるものをお客様に直接お届けできますし、食べてくれた方の反応が見れると、会社のみんなにも喜んでもらえるので嬉しいですね」
私たちの暮らしとつながる
あられの素材
取材をしていて気になったのは、なぜあられ屋が減っているのかということでした。かつて、戦後の岐阜市周辺はあられ屋が多くあったと言います。戦後焼け野原の状態から、生きていくために手元にあるもので商売をしようとあられづくりを始めた人が多くいたのかもしれません。ですが、今、あられ屋が減っているのは「後継者不足が一番影響しているかもしれない」と有子さんは話します。確かに、戦後に比べれば仕事の選択の幅が広がった現代において、製造に手間暇かかるあられ屋をやろうとする人は少ないのでしょう。
さらに、近年では、中国やタイの海外製のあられが増えています。年々クオリティも上がっているそうで、あられ業界もグローバル化の波に押されて、厳しい状況に陥っていると言えます。ここ最近の米価格の高騰も今後影響してくるでしょう。もち米から米の生産に転化した農家も多く、もち米の値段も上がっていくことが予想されます。
こうした話を聞いていると、響hibi-kiが普段接している木材や林業と近いものを感じました。同じ一次産業と密接だからこそ、当然といえば当然なのかもしれません。自然環境の変動や、社会の変化に左右されながら、あられも木材も私たちの手元に届いています。
丸幸製菓さんのあられができるまでを知ると、あられを口にしたとき、より味わい深く感じられるのは気のせいでしょうか。でも、ますますやみつきになっているのは確かです。
店長の取材後記
宮部さんの明るいお人柄と、新しい挑戦を楽しむ気持ちが、最初にお会いした時から不思議と共鳴するものがあり、初めてのオリジナル商品の制作で、少し不安だった気持ちが一瞬でなくなったのを覚えています。
岐阜土産の代表になるものを作りたい!と同じ気持ちを持ってくださる方なので、今後も一緒にあられを盛り上げていけたらいいなと思います。
●Information
丸幸製菓株式会社
岐阜県岐阜市古市場中原54
TEL 058-239-0309
Instagram https://www.instagram.com/marukou_arare/
