響hibi-ki STOREのオリジナルグッズとして、“鮎と鵜のブローチ&キーホルダー”が新登場しました。制作を担っているのは、岐阜県高山市を拠点に活動する<奥井木工舎>の奥井京介さんです。先日、店長とともに奥井さんの工房を訪れ、どんな環境や暮らしから、この愛らしい小物が形づくられているのか、フィールドワークを行ってきました!今回はその模様をお届けします。
木の生きもの(?)
続々誕生!
鮎と鵜をモチーフにした国産の木材を使った小物は、他にないユニークなアイテムです。カバンやポーチ、カギなどに取り付ければ、ふとしたときにかわいい姿が目に入って、それだけで癒されます。身近にあるだけで、穏やかな気分になれる不思議なグッズです。


「岐阜のお土産になるようなものをつくりたい」。そんな思いから、このブローチとキーホルダーが生まれました。
響hibi-ki STOREがある岐阜市は、1300年以上続くとされる伝統漁法、長良川の“鵜飼”が風物詩となっています。そんな鵜飼を象徴する“鮎”と“鵜”を木でつくりたいと相談したところ、協力してくださったのが奥井さんでした。
帰省のタイミングで響hibi-ki STOREへ立ち寄っていただくお客様もいらっしゃるため、木のもので、何か岐阜のお土産として思い出に持ち帰ってもらえるものをつくりたいと考えていた葛西店長。以前から取り扱っていた「kotsukotsuブローチ」や「飛騨の雪入道」の作り手である奥井さんとコラボすれば、より多くの人に喜んでもらえるグッズがつくれるのではと思い、相談することにしたと言います。


奥井さんが手がける商品は、いずれも響hibi-ki STOREの実店舗と、オンラインストアで販売中です。写真と現物はまた違って見えるので、機会があればぜひ店舗へ立ち寄っていただき、直接お確かめください!
●オンラインでのご購入はこちらから
ブローチ
https://hibi-ki.shop-pro.jp/?pid=154265943
キーリング
https://hibi-ki.shop-pro.jp/?pid=153679487
飛騨の雪入道
https://hibi-ki.shop-pro.jp/?pid=187543056
愛らしい木の生きものたちが、どのように生まれ、どこからやってきているのか。その源流を辿ってみましょう。
飛騨高山の
のどかな暮らしを感じる
奥井さんは、幼い頃からモノを手づくりするのが好きだったと当時を振り返ります。絵を描くことや彫刻も好きで、自宅の勉強机、しまいには学校の机に絵を彫っていたこともあったのだそうです。それを見つけた先生が「すごい才能だ」と、美術系の学校への進学を勧めてくれたこともありました。

ちなみに、冒頭で紹介した鮎や鵜、ブローチの動物たち、雪入道のデザインはすべて奥井さんが手がけています。なるほど、あのほんわかしたデザインには、奥井さんが子どもの頃から触れてきたもの、培ってきたものがぎゅっと詰まっているのだな、と納得させられました。
といっても、奥井さんは始めからデザインや工芸の道を歩んできたわけではありません。高校卒業後は、地元・大阪の会社に就職しました。しかし、1995年の阪神・淡路大震災の影響で勤務先の会社が操業できない状態になり、アルバイトや商社での勤務を経て、木工の道を目指すことになります。
手仕事がしたいと考える中で、両親の出身地である高山市に木工の学校があることを知り、2002年に<岐阜県立木工芸術スクール>に入学します。お金も車もない状態で高山へ引っ越してきて、心機一転の生活の始まりでした。
卒業後は工芸関係の会社に就職しますが、体調を崩してしまいしばらく休養することに。そんな状態でも、家で何かできることがないかと、電動糸鋸でkotsukotsuブローチの制作を始めたのでした。
木杓子をつくっていた際には、端材を捨てることなく活用したいとの思いから、飛騨の雪入道も誕生。木工品をつくりながら、友人が紹介してくれるアルバイトや、パソコンだけでできる在宅の仕事を組み合わせて、日々の生活を営んできました。現在は奥さんと娘さんの3人で暮らしています。

「僕が住んでいる朝日町は静かで、のどかで、地元の方に怒られるかもしれませんが、何もないところです。バスは土日だと1日1本しか運行していません。田舎はお金の使い道があまりないので、生活費はそれほどかからないです。野菜をおすそ分けしていただくこともありますし、縁側で近所のおじいちゃんおばあちゃんとおしゃべりしながらお茶を飲むだけで楽しいですよ。夏は釣り、冬は雪遊びをするのが好きですね」
奥井さんの話を聞いているあいだも、部屋の網戸の外から爽やかな鳥の鳴き声や、心地よい風が入ってきて、普段の奥井さんの暮らしを少しだけ感じることができました。その一瞬だけでも、心がほぐれるのだから不思議です。kotsukotsuブローチが目に留まったときの感覚に近いものがありました。
奥井さんが撮影する日常風景は、奥井木工舎さんのInstagramからご覧いただけます。気になる方は
ぜひ覗いてみてください。
●奥井木工舎 Instagram
https://www.instagram.com/osashimigasukidesu/
つかのまの
木工家体験
そろそろお暇しましょうか、と腰を上げかけたところで、奥井さんが「ホオノキ削ってみます?」と声をかけてくれました。願ってもない提案だったので、喜び勇んで作業部屋に向かいました。

もともと奥井さんが杓子づくりで使っていたホオノキは、抗菌作用のある成分を多く含み(材の緑色の部分)、調理道具としてはうってつけの樹種なのです。また、ものをすくうための道具である杓子は、“人を救う”ものとして古くから信仰の対象にもなっていたのだと言います。
奥井さんの興味深い話に前のめりになる取材陣。話はほどほどに、まずはホオノキを割る体験に挑戦させてもらいました。丸太の断面に飛騨地方に伝わる昔からの道具「マンリキ」と呼ばれる刃物を当てて、掛矢で叩いて木目に沿って割ります。


割った板をさらに細かく削っていくことで、杓子の形に近づいていきます。そして、その削りのときに出てくる木片が、飛騨の雪入道になっているのです。
続いて、出刃包丁を使った削りの作業も体験させてもらいました。刃を当てる角度と、力加減にコツが要りますが、慣れてくると気持ちよく削れるのでなかなかクセになる作業です。

昔から山間の農閑期につくられてきたという杓子は、材が一番柔らかい生木の状態で行うものなのだそうです。だからこそ、「日本の元祖グリーンウッドワークは杓子なんです」と奥井さんは言います。
※グリーンウッドワークの詳細はこちら:https://hibi-ki.co.jp/hibikitours044/
「高山は森や木がこんなに身近なのに、生木を使って木工をする人、グリーンウッドワークを専門にしている人はあまりいないんですよ。だから、グリーンウッドワークの指導者も高山で育てていきたいと思っています」
奥井さんが山奥でコツコツと培ってきた木工技術、そして、ゆるやかにつながる地域の仲間たちとの連携を通じて、この先どんな動きが生まれてくるのでしょうか。機会をうかがって、今後も取材を続けていくつもりです。そして何より、次に訪れるときは、朝日町の自然をゆっくり満喫したいと思います。
●店長の取材後記はこちら
https://www.instagram.com/p/DMWidIlu4Or/?img_index=1
●Information
奥井木工舎
HP https://mainichi-kotsukotsu.jimdofree.com/
