日本の木を中心とする自然素材でつくられた民藝や日用品、その作り手を取り上げる「にっぽん民藝journey」。響 hibi-ki STOREで取り扱うアイテムの中から、とっておきの一品をピックアップします。今回は石川県加賀市で400年以上続く伝統工芸・山中漆器の産地でつくられるうつわです。国産原木の仕入れから加工まで一貫して製造しているという稀有な木工所〈白鷺木工〉の末広さんと戸田さんから話を伺いました。
家族でそろえたくなる彩りと
飲みやすい“玉渕仕上げ”
すっとしたフォルムで、ふちの色味と木目のコントラストが美しい「いろは椀」は、子どもでも持ちやすい軽さと豊富なカラーバリエーションで、家族そろって使うのにおすすめです。汁物が飲みやすいという「玉渕仕上げ」も特徴の一つ。細部へのこだわりについて販売担当の末広さんが教えてくれました。
「お椀の縁を丸くする製法『玉渕仕上げ』は口当たりがよく、汁ものが垂れにくいつくりになっています。玉渕の影響でぱっと見はわからないんですけど、全体はものすごく薄く削ってあるのですごく軽いんです。木地に色をつけたときにコントラストでパキっとかわいく見えるよう、今はカエデの木だけでつくっています。というのも、天然のカエデは色白なんですね。カエデの中でも貴重な白い部分を選りすぐってつくってます」
夏場よりも冬場に伐採された木のほうが白い部分が採れるため、いろは椀は冬の木を多く使っているそうです。選び抜かれた素材でつくられているお椀だと知ると、長く大切に使いたくなるものですね。
市役所職員から木工職人へ
華麗なる転身
白鷺木工のある山中(やまなか)地域は、その名の通り山奥深くにあります。緑に囲まれた工場内では、職人たちの手により、製材機で原木を輪切りにするところから製造がはじまります。ちなみに原木は石川・岐阜・福井などの木材市場で買いつけて来るそうです。もしかすると手に取った商品が自分の住む地域で育った木だった、なんてこともあるかもしれません。
輪切りした木材をお椀に近い状態に製材し、木工旋盤(せんばん)で大まかな寸法に近づけます。木地に歪みが出ないよう1~3か月乾燥させたあと、ろくろで仕上挽きし、漆や色つけを行って再び乾燥させ、完成となります。木工旋盤による機械加工と、ろくろによる手加工を織り交ぜることで、量産・均質化の技術と職人技がいい塩梅で融合するように工夫されています。
●製造の様子はオンライントーク動画の14:50頃~
白鷺木工では最年少の19歳から年配のベテランまで、現在9名の職人が働いています。若い職人が集まりやすいのは、地元に“ろくろの学校”があることも影響しているようです。白鷺木工のInstagramを見て「やりたい!」と入ってきた若い女性もいるなど、つくり手を受け入れるうつわの広さは新しいものづくりにも活かされていると感じます。
そうした多彩な職人を取りまとめているのが、白鷺木工3代目の戸田勝利さんです。家業を継いだ生粋の木工職人かと思いきや、話を聞くとどうやらそうでもないようです。
「29歳まで地元の市役所で働いてました。仕事で山中漆器の木地師の方と話をする機会があって、自分の父親の話になったんです。原木の目利きのすごさとか、このままだと目利きできる人がいなくなるという話を聞いて、『父親と働いてみたいな』と思ったことがこの仕事をはじめるきっかけですね」
木地師になって12年目の現在は、新たな木地師を育て、送り出す立場になりました。
「(独立した方々は)歳も近いので、弟子という感覚ではないですけど、同業者でありながら、がんばってほしいと思える存在です。応援したくなりますね」
山中漆器の産地だけでなく、全国的に木地師が減っている現状に危機感を抱いているからこそ、オリジナルブランドを立ち上げたりオンライン工場見学を行ったり、自ら世に出ていく取り組みも緩めません。そうした活動の延長線上で、私たちは白鷺木工のうつわに出会うことができました。受け手・使い手にまで使命を感じさせる戸田さんたちの熱量が、今この筆を走らせてくれています。
●「いろは椀」販売ページ
https://hibi-ki.shop-pro.jp/?pid=154727266
●「しらさぎ椀」販売ページ
https://hibi-ki.shop-pro.jp/?pid=153786639