日本の木を中心とする自然素材でつくられた民藝や日用品、そのつくり手を取りあげる「にっぽん民藝journey」。響 hibi-ki STOREで取り扱うアイテムの中から、とっておきの一品をピックアップ。今回はオリジナル製法で手染めされた、かわいらしいぬいぐるみを紹介します。
生木綿に刷る
木版画
じっとこちらを見つめる表情が愛らしいぬいぐるみたちは、十二支の子どもシリーズ。中にはもみ殻が詰まっていて、少し硬めの手触りです。素材となる生木綿を飛騨の木版で手染めし、縫い合わせまでもが人の手で行われているため、つくり手の愛情がたっぷりつまっています。
ぬいぐるみをつくるのは、岐阜県の飛騨高山に工房を持つ〈真工藝〉です。木版画の技術を応用してさまざまな工芸品をつくっています。飛騨高山は、森林面積の割合が全体の9割を超えており、古くから木材の産地でした。馴染みある木材でつくられた版画は、飛騨高山の人々にとって寒い冬の間の楽しみだったそうです。木版画は紙に刷るのが主流ですが、先代の妻が染色家であったことから、木版を“布に刷る”技術を独自に開発しました。それが「木版手染」という製法です。
つくり方は本当の版画のようです。模様を深く掘った木版に筆で色を付け、その上に生木綿を置いてしっかりと刷り込みます。その布を高温で蒸すことで色が止まり、独特の柔らかい色味になります。木綿を切り取り、中にもみ殻を入れて縫製したら完成。一つひとつの工程がすべて手作業で行われるため、一つとして同じものがありません。ぬいぐるみをよーく見ると、顔や色も少しずつ違うことがわかります。また、それぞれの干支にまつわる模様があしらわれたデザインも注目ポイントです。じっくり観察してどんな意味が込められているのか考えてみると面白いですよ。
昔から馴染みがあった「木版画」の伝統を、真工藝はより親しみやすい形に生まれ変わらせました。日々の暮らしの中でホッと心がほぐれるような、温かみのあるぬいぐるみをつくり続けています。