ヒビキツアーズ
# 23
大工技の奥深さにハッとする!?
HUT to Tekizami 2021 in吉野
2021.10.29

山・林業・アウトドアなど森にかかわる全国のイベント情報をお届けするヒビキツアーズ。今回は、木材の良さを存分に引き出す大工の「手しごと」に焦点を当てた、ニッチでディープな世界を紹介します。

写真:掲載先/文:高岸 昌平

家や素材と向き合う
大工の技

大工の家づくりといえば、柱や梁の上を足袋をはいて歩きながら木材を組み上げていく姿が印象的ですが、大工の仕事は組み立てるだけではありません。実は、組み上げる前の木材の準備が大切なのです。そんな家を組み上げるまでの大工技を、間近で見られるイベントがあります。

木材の準備にも様々な工程があるのですが、中でも「手刻み」と呼ばれる代表的な技術があります。手刻みとは、家づくりに使う木材の接合部分を手仕事で凹凸に加工する大工の技術で、新築の家はもちろん、リフォームや古民家の修繕でその真価を発揮します。

ノミを使い木材にホゾを彫ります。

響 hibi-ki を運営する飛騨五木グループでも手刻み・墨付けを得意とした家づくりを行っています。詳しくはこちら

例えば、古い木材と新しい木材を接合するときを考えてみましょう。家にゆがみはないか?古い木材に腐りなど欠陥はないか?新しい木材と強度のバランスはどうか?安心して住める家を作るには、それぞれの木材の状態や家の癖を見極めることが大事です。そうしてそれぞれの家の状態に合わせて「手刻み」で組み上げていくのです。

大工技にサークル誕生
「手刻み同好会」の実態とは?

そんな大工技を継承していこうと「手刻み同好会」なるものが結成されました。同好会というからにはゆるい集まりなのかと思いきや、結成の背景には手刻み技術を取り巻く厳しい環境がありました。

木材を刻む位置を記しておく「墨付け」は手刻みとセットの大事な技術。

現在、家づくりが合理化されていく中で、手間のかかる手刻みを行う地域の工務店は大幅に減少しています。さらに熟練大工の高齢化もあいまって、技術継承を担える方も少なくなっているといいます。時代に合わせて手刻み技術を継承・発展していけば、人と家・地域と大工文化・暮らしと自然、それぞれの関係性をさらに豊かにしていくことができるはず!という思いをもって、全国の有志の工務店・学者・建築関係者が集まり「手刻み同好会」が結成されました。

そんな「手刻み同好会」の主な活動は、
・手刻み技術のPR
・大工技術と知恵の情報共有
・若手にひらかれた学びと実践の場づくり
などです。この度開催される「HUT to Tekizami 2021 in吉野」もその一環というわけです。

木材のプロがプロデュースした
“ホンモノ”に触れられるイベント

「HUT to Tekizami 2021 in吉野」は日本有数の材木産地である奈良県吉野町で、手刻み技術と吉野材をPRする2日間のイベントです。長年吉野材と向き合ってきた吉野製材工業協同組合が主催し、企画・運営は手刻み同好会が行います。

イベントタイトルにあるHutとは、「必要最小限の小さな小屋」を表すドイツ語。小さな小屋にパッシブデザインの設計思想・大工の優れた手加工の技術、自然素材の粋を詰め込んで、伝統建築の良さや人の手で刻むことの意味を発信します。

普段は触れることのない、家を「手しごと」で作り上げていく価値や、間近でみることのできない大工技・素材の奥深さ。じっくりと体感してみると大工や家づくりに対して新しい気付きが生まれそうです。

「HUT to Tekizami 2021 in吉野」

●開催日時
2021年11月6日(土)・7日(日)
●メイン会場・総合受付
吉野製材工業協同組合敷地内(奈良県吉野郡吉野町丹治11番地)
※イベントに参加する際は、総合受付においでください。
※コンテンツごとに、開催時間、場所などが異なりますので、タイムテーブルをご参照ください。オンラインで参加できるプログラムもあります。
●内容
・トークディスカッション
・建て方実演
・手刻み実演・交流スペース
・吉野材ツアー
●クレジット
「手刻み加工実演と吉野材展示・商談会」
主催:吉野製材工業協同組合
共催:手刻み同好会
後援:吉野町、奈良の木ブランド課
●詳しくはこちら
https://note.com/tekizami_2021/n/n9bae0c5df298
高岸 昌平 (たかぎし・しょうへい)
さいたま生まれさいたま育ち。木材業界の現場のことが知りたくて大学を休学。一人旅が好きでロードバイクひとつでどこでも旅をする。旅をする中で自然の中を走り回り、森林の魅力と現地の方々のやさしさに触れる。現在は岐阜県の森の中を開拓中。