ヒビキツアーズ
# 22
“動かない”動物園!?
「望月鮎佳展 -あつまるアニマル-」
2021.10.14

山・林業・アウトドアなど森に関わる全国のイベント情報をお届けする連載。今回は“芸術の秋”にぴったりなアートイベントのお知らせに加えて、作家さんのインタビューも敢行しました。どんな過程を経て作品ができているのか、そんな点を知ってからぜひ足を運んでみてください。

写真:編集部/文:田中 菜月

街路樹や巨木から生まれた
人に寄り添う動物たち

岐阜県各務原市の公園施設等で10月14日(木)~11月9日(火)にかけて、「望月鮎佳展 -あつまるアニマル-」が開催されています。動かない動物たちは木彫によりつくられた作品です。それぞれエリア内に点在し、本物の動物にはない独特な存在感を放っています。これらの作品は、同市在住のアーティストであり中学校の美術教諭でもある望月鮎佳さんが制作しました。

クマの親子と望月さん。

また、この展覧会は各務原市の「アートブリッジ事業」の一環でもあります。「アートでうごかす・アートでつながる」をコンセプトに、アートと地域資源を掛け合わせ、市内のヒト・モノ・コトをつなぐ取り組みです。2021年は「ART×公園」をテーマに活動を展開してきました。

また、この展覧会は各務原市の「アートブリッジ事業」の一環でもあります。「アートでうごかす・アートでつながる」をコンセプトに、アートと地域資源を掛け合わせ、市内のヒト・モノ・コトをつなぐ取り組みです。2021年は「ART×公園」をテーマに活動を展開してきました。

会場の一つであるKAKAMIGAHARA PARK BRIDG(KPB)では、今年の5月から動物の木彫のレジデンス(滞在制作)を行い、制作の過程を鑑賞したり、アーティストと交流できたりする場を設けて、まちの空間としての可能性を探ってきました。今回の展覧会はその滞在制作で生まれた作品たちのお披露目の場となります。

「望月鮎佳展 -あつまるアニマル-」

●開催期間
10月14日(木)~ 11月9日(火)
●場所
各務原市産業文化センター エントランスホール
各務原市民公園
学びの森
KAKAMIGAHARA PARK BRIDGE
■「アートピクニック」
展覧会の期間中には、望月鮎佳さんの彫刻作品を巡ってオリジナルスタンプを集めるスタンプラリーと、スタンプを組み合わせて動物作品を作るワークショップが行われます。
●開催日時
10月24日(日)
【スタンプラリーあつまるアニマル】
10:00~16:00
【Stamp Animals (スタンプ アニマルズ)】
第1回 10:30~12:00
第2回 13:30~15:00
※望月さんが講師を務めます
●場所
各務原市民公園内(アートピクニック Aエリア)
●詳しくはこちら
https://www.city.kakamigahara.lg.jp/kankobunka/1004515/1004516/1012590.html

巨大なイチョウが
届くまで

実は、この滞在制作の素材となった「ニセアカシア」と「ヒトツバタゴ」はKPBができる前にこの地に生えていた樹木を使っています。そして、もう1種類の「イチョウ」の木は、響hibi-kiを運営する飛騨五木グループから提供させてもらったものです。望月さんに本社の岐阜県高山市まで来てもらい、実物のイチョウを見てもらったのが昨年12月のことでした。

望月さんご夫婦と各務原市の担当者・廣江さんが来社。この日は雪がちらつく寒さの厳しい日だった。

太さ1m前後、長さ2~3mほどの大木を実際に見てもらい、どんな生きものを制作するかイメージを膨らませてもらうところからはじまりました。本当はこのままの状態で削り出す予定だったのですが、かなりの重量で施設の外構を傷つけてしまう恐れがあり、三分割した状態で各務原市へ運ぶことになりました。

弊社の伐採担当者や土木工事の担当者、現場監督たちにかけつけてもらったおかげで、KPBの一角になんとか設置完了。これが今年のゴールデンウイークのことでした。ここから望月さんにバトンタッチして、イチョウが新たな形へと変わっていきます。

内に秘めているものを
感じさせる作品をつくりたい

初めにチェーンソーでざくざくと削り出していくと、あっという間に動物らしき形が見えてきます。普段はあまり耳にする機会のないチェーンソーの音や木の香りにつられてか、道行く人や施設に遊びに来た子どもたちも興味深げに見に来てくれました。

望月さんが美術教諭として勤める中学校の生徒たちが制作現場を尋ねて来ることもあったようです。「KPBだけじゃなくて、美術の授業で途中経過を見せることもありますし、美術室で制作することもあるので部屋がどんどん木の匂いになってますね。『くさ~』っていう子もいて、『ごめんね~』なんて言いながら制作を続けてます(笑)」

小学校のときに出会った先生がきっかけで「美術の先生になりたい」と思うようになった望月さんは、今まさに憧れた先生になっているように見えました。

幼い頃から絵を描くことが好きで一番没頭できることだったと話す望月さんが木彫をはじめたのは、大学3年生のときのこと。所属していた美術教育のコースには油絵やデザイン、美術史、工芸などさまざまな分野の先生がいましたが、専攻を決めるときに出会ったのが木彫の先生でした。

平ノミや丸ノミなど、使う道具によってちがった彫り跡が残り、複雑な模様が生まれる。
子羊の首元。本物の動物以上にじっと見つめてしまう。
チェーンソーで削った跡。近付いて彫り跡を鑑賞するのも面白い。

「木彫をやってみて『木って心地良くていいわ~』と思いました。木の香りも好きだし、ノミで彫った跡がキラっと輝くところも好きですね。それより前は絵画をやっていたんですけど、平面で表す世界なのでどこかで限界を感じていて。今でも描くことは好きなんですけどね。木彫は立体だからどの角度からも見れるし、触れて気持ちいいし。人肌に近いのもあって、木をなでたりぎゅっとしたり、自分の好きなものを愛でながら制作できるのは自分に合ってるなと思います」

「木彫をやってみて『木って心地良くていいわ~』と思いました。木の香りも好きだし、ノミで彫った跡がキラっと輝くところも好きですね。それより前は絵画をやっていたんですけど、平面で表す世界なのでどこかで限界を感じていて。今でも描くことは好きなんですけどね。木彫は立体だからどの角度からも見れるし、触れて気持ちいいし。人肌に近いのもあって、木をなでたりぎゅっとしたり、自分の好きなものを愛でながら制作できるのは自分に合ってるなと思います」

望月さんのおばあちゃんは岐阜県恵那市の山奥に住んでいて、叔父さんは林業関係者だったこともあり、小さい頃から自然や木が身近にあったと言います。そうした原点は今の木彫制作につながっているのかもしれません。

そしてもう一つ核になっているのが、「生きる」という作品全体のテーマです。これまで彫ってきた生きものは人の暮らしと密接な関係を持つ動物たちばかりです。

「家畜のような人間に寄り添った動物をテーマにしていて、キリンとかそういうのは違うかなと一線を引いていますね。“かわいい”“かっこいい”だけじゃない、何か内に秘めているものを感じさせる作品をつくりたいなと思ってます。動物以外にも人をつくることもありますよ。祖母の木彫をつくったときは、しわを表しつつ、でもまだパワーがみなぎってる感じを表現したり、自分が前に歩み出す感じをつくってみたり、豊満な女性をつくったこともありますね。見ている人にパワーを与えられるような、そんなイメージで制作しています」

「家畜のような人間に寄り添った動物をテーマにしていて、キリンとかそういうのは違うかなと一線を引いていますね。“かわいい”“かっこいい”だけじゃない、何か内に秘めているものを感じさせる作品をつくりたいなと思ってます。動物以外にも人をつくることもありますよ。祖母の木彫をつくったときは、しわを表しつつ、でもまだパワーがみなぎってる感じを表現したり、自分が前に歩み出す感じをつくってみたり、豊満な女性をつくったこともありますね。見ている人にパワーを与えられるような、そんなイメージで制作しています」

ひと彫りひと彫り手を動かし、頭の中で思い描く形をつくり込んでいきます。制作している様子を見ていると、とても穏やかで、淡々と進めているように感じられるのですが、実際の心境はどうなんでしょうか。

ひと彫りひと彫り手を動かし、頭の中で思い描く形をつくり込んでいきます。制作している様子を見ていると、とても穏やかで、淡々と進めているように感じられるのですが、実際の心境はどうなんでしょうか。

「結構悩みますね。『これでいいのか?』とか『もっと柔らかい質感を出したいのに表せんなあ』とか、めちゃくちゃ苦しみながらやってます(笑)。だから短時間でやろうと思ってもできないですね。時間をかけた分だけ『なんかちょっと良くなってきたかも』って思えるのは楽しい瞬間です。そこに行き着くまでが長いですけど。それと、私は大きい作品をつくるのが好きなんですよね。置く場所に困るんですけど(笑)」

展覧会が終わったあとはKPBの敷地内に望月さんの作品をいくつか展示させてもらう予定です。展覧会には行けないなあという方も、KPBに来ていただければ鑑賞したり触ったりすることができますのでご心配なく!ぜひ実物を体感しに来てください。

田中 菜月 (たなか・なつき)
1990年生まれ岐阜市出身。アイドルオタク時代に推しメンが出ていたテレビ番組を視聴中に林業と出会う。仕事を辞めて岐阜県立森林文化アカデミーへ入学し、卒業後は飛騨五木株式会社に入社。現在は主に響hibi-ki編集部として活動中。仕事以外ではあまり山へ行かない。