ひビキのヒび
# 43
FUSOグループとの連携から
水道と森の関係を考える
2025.10.31

水道の蛇口をひねれば、いつでも水が出てくる。冷静に考えたらすごいシステムです。水道はどのように構築され、どうやって運用されているのか。そして、その管の中を通る水は、一体何処からやってくるのか。そんなことを改めて考えさせられたのが、FUSOグループさんとの出会いでした。

写真・文:田中 菜月

水と共に生きる

見出しの「水と共に生きる」は、株式会社フソウの企業メッセージとして掲げられている言葉です。東京都に本社を構える同社は、上下水道事業全般を展開し、暮らしのインフラを支えています。今年7月下旬には、株式会社フソウおよびFUSOグループホールディングス株式会社と、響hibi-kiを運営する飛騨五木グループとで戦略的事業提携に関する協定を締結しました。

【FUSOグループ×飛騨五木グループ】戦略的事業提携に関する協定締結のお知らせ|岐阜県高山市の飛騨五木

この協定をきっかけに、水道と森林の関係性についてあれこれ考えていた折、“フソウの森”で毎年開催しているという間伐体験にお誘いいただき、交流と取材を兼ねて参加させてもらうことになりました。

“フソウの森”で毎年開催している間伐体験にて撮影した参加者集合写真

多摩川上流域に位置する「フソウの森」(山梨県甲州市)は、株式会社フソウが水道水源林の保全活動の一環として東京都水道局よりネーミングライツを取得した森林です。同社では間伐作業や学びを通じて、森林保全や水循環の重要性についての理解を深める、人材育成の取り組みとして活動を継続しています。

フソウの森と
ボードゲーム

間伐体験の際には、東京都水道局の方から水道水源林の概要や森の働きなどについて解説していただきました。同局が管理している水道水源林は甲州市だけでなく、山梨県の小菅村、丹波山村、東京都の奥多摩町にまたがっており、全体の面積は約26,000haにもおよびます。

明治時代のころには、森林の荒廃が進み、大雨で流された土砂により水が濁るなど、飲み水に深刻な影響が出ていたと言います。安心して飲める水を確保するべく、「明治34年(1901)に多摩川上流の御料林(皇室が管理していた森林)を当時の東京府が譲り受けて自ら経営することとした、というのが水道水源林の管理の始まり」(※)なのだそうです。

※出典:水源の森を守る公務員 ~「水道水源林」で働く水道局林業職の仕事紹介~|東京TECHブログ(東京都技術会議)

歴史を振り返ることで、飲み水が欠かせない人間にとって森林がいかに重要かを思い知らされます。こうして学びを深めたところで、次は身体を動かして間伐体験をする時間です。東京都森林組合の指導の下、ロープ上げ体験や手ノコとロープを使った伐倒作業を行いました。

作業後には、東京都の“水がめ”である小河内貯水池(奥多摩湖)と小河内ダムも見学しました。間伐体験を行ったフソウの森を含む、水道水源林から流れ込んだ水が集まり、貯水池となっている場所です。都内に供給される水道水のうち約2割が、この多摩川水系の水なのだと言います。

小河内貯水池。晴れた日にまた来たい。
小河内貯水池。晴れた日にまた来たい。
ダムの下方にあるのが「多摩川第一発電所」。
ダムの下方にあるのが「多摩川第一発電所」。

ここで貯えられた水は、発電に使用したあと、川に放流されて水道原水として取水。「小河内ダムは東京都の独自水源として、利根川水系の渇水時や事故時には放流量を増やすなど、住民の安定給水の確保に重要な役割を果たして」(※)いるとされています。

※出典:小河内ダム|安定した水源の確保|東京都水道局

また、体験の合間には、響hibi-kiがつくった「FOREST BALANCE GAME」をFUSOグループの皆さんに体験していただきました。ボードゲームを通じて、間伐作業と持続可能な森づくりの関係や意義を考えるきっかけになっていれば幸いです。

ちなみに、フソウの森に入る前、FOREST BALANCE GAMEのおみくじに登場する「鹿のツノを見つける」が現実になり、まさかの嬉しい展開でした。

響hibi-kiがつくった「FOREST BALANCE GAME」をFUSOグループの皆さんに体験していただきました

今回の体験では、日頃から森林に慣れ親しんでいる編集部にとっても、“水道”というキーワードが加わることで、新たな視点で森林に目を向ける機会となり、学びの多い時間を過ごすことができました。また、社内のチームビルディング等に活用するべく、FUSOグループオリジナルの“水道ゲーム”の開発も検討されているとのことで、引き続き水道にも注目していきたいところです!

こうして、水道と森の関係について考え、改めて感じたことは、そもそも水は地球と自然のしくみから生み出されたものであるということです。

水は、海・雲・雨・川・海と形を変えながら地球上をめぐり続けています。その循環の中で、水質をきれいにし、川に流れ出る水量を調整する作用をもたらすのが森林です。そして、この水循環のシステムを、人の暮らしに接続させているのが水道の存在と言えます。森林も水道も、どちらかが欠けてしまえば、私たちは安定的に美味しい水が飲めなくなってしまいます。

長い歴史と経験を経て築かれた礎の上に、自分たちの暮らしがある。そんな当たり前のことに気づかされた1日でした。

東京都水道水源林「フソウの森」令和7年度 第2回活動報告 ~間伐作業を実施しました~ | お知らせ | 株式会社フソウ

田中 菜月 (たなか・なつき)
1990年生まれ岐阜市出身。アイドルオタク時代に推しメンが出ていたテレビ番組を視聴中に林業と出会う。仕事を辞めて岐阜県立森林文化アカデミーへ入学し、卒業後は飛騨五木株式会社に入社。現在は主に響hibi-ki編集部として活動中。