岐阜県内の農林高校生たちが集う競技型就業体験イベント「ぎふ林業甲子園」が、9月13日(土)に岐阜県立森林文化アカデミーで開催されました。昨年から競技内容をさらにアレンジし、優勝賞金も加わって、バージョンアップ。今年の林業甲子園の行く末はいかに?
初参加校は
ダークホースとなるか?
「ぎふ林業甲子園」は、学校ごとのカリキュラムや設備の差を超え、誰もが挑戦できる“実践型の学びの場”です。競技内容は現役の林業従事者やフォレスターが監修し、現場で必要とされる力を競技化。さらに地域の事業者や各農林高校の卒業生との交流も取り入れ、人材育成と地域との接続を両立する試みです。
主催は森のジョブステーションぎふ(公益社団法人岐阜県森林公社)、企画・運営は響hibi-ki(飛騨五木株式会社)が担当しています。
▼過去のぎふ林業甲子園レポート
昨年:https://hibi-ki.co.jp/hibikinohibi033/
一昨年:https://hibi-ki.co.jp/hibikinohibi029/
3回目の今年は、常連校である加茂農林高校、岐阜農林高校、飛騨高山高校に加えて、恵那農業高校が初参加し、全4校11名の生徒が集いました。
午前の部では、アカデミーの演習林をフィールドに、毎年恒例の『選木競技』と『伐採木判定競技』を実施しました。各競技後の解説の時間にゆとりを持たせるため、昨年の獣害対策競技をなくし、2種目に絞っています。
午前の部①:選木競技



選木競技では各校が苦戦する中、飛騨高山高校は全体の正解率が60%とダントツの1位を獲得し、他校を一気に引き離します。特訓でも積んできたのだろうかと思わせる奮闘ぶりでした。
午前の部②:伐採木判定競技

伐採木判定競技に移ったところで、突然の土砂降りに見舞われてしまいました。そんな状況でもお構いなしに、伐採木の樹高などを予想し始める生徒たち。小雨になったところで、伐採の見学も行いました。伐採後の木を計測して正解を判定した結果、加茂農林高校が高得点を獲得し、じりじりと追い上げを見せる展開に。
と、ここで午前の競技は終了です。お昼休憩をはさんで、午後の競技に臨みます。

大人も大フィーバーな
後半戦
午後の部は、林業の知識を問う競技がメインです。昨年までは製材や木材にまつわる競技がありましたが、今年は林業にフォーカスを当てる形にアレンジしています。
新たに加わったのは「道具判別競技」と「安全装備着用競技」です。学校の授業でふれる機会はあまりないようで、初めて目にする道具や装備に戸惑っている様子が伺えました。
午後の部①:木材重量予想競技

午後の部②:樹種判別競技


午後の部③:道具判別競技

午後の部④:安全装備着用競技

最終競技の「丸太切り競争」は、特別競技として総合得点には加算しない別枠として実施しました。10分間でどれだけ多く輪切りをつくることができるかを競います。
また、交流も兼ねて、各校のチームに講師や運営スタッフ、オブザーバー、森ジョブアンバサダーのさばいどる・かほなんが加わり、協力型競技としました。さらに!優勝チームには特別賞も用意。会場は俄然、熱気に包まれていきます。
午後の部⑤:丸太切り競争




序盤はどのチームも凄まじい勢いで丸太を切り進めていきますが、時間が経つごとにスピードが落ち、疲労の悲鳴も聞こえ始めてきます。制限時間を迎え、「ようやく終わった…!」と安堵したところで、みんなで枚数を数えます。
岐阜農林が21枚、加茂農林が23枚、恵那農業が26枚、飛騨高山が31枚と圧倒的な差をつけて、飛騨高山高校が勝利をつかみました!
こうして大団円を迎え、ケガもなく無事にすべての競技が終了。そして、今年の優勝を勝ち取ったのは、初年度の優勝校・加茂農林高校でした!どの競技でも落ち着いていた印象で、事前練習に励んできたのだろうと思わせる風格を感じました。加茂農林高校の皆さん、優勝おめでとうございます!
《各校の最終得点》
加茂農林高校 70点
飛騨高山高校 62点
恵那農業高校 47点
岐阜農林高校 40点


また、今年は協賛として各校に、人体・環境・機械にやさしいスウェーデン発の燃料「ASPEN2」を株式会社橋本屋からご提供いただきました。
▶ 日本の林業に新しい一歩を。人体・環境・機械にやさしいスウェーデン発の燃料「ASPEN2」、日本に初上陸。 | 株式会社橋本屋のプレスリリース

欧州の林業現場では当たり前に使われているというASPEN2。かたや日本では、健康や環境に有害な物質を含む排ガスを至近距離で浴びているのが現状です。そこに一石を投じようと、同社での販売が始まりました。
「日本ではバイクや自動車へので排ガス規制が非常に厳しい一方、チェンソーや刈払機など林業現場で使用される機械には規制がほとんどなく、そこが林業現場の労働環境の課題のひとつです」と話すのは、株式会社橋本屋の代表・東原正典さんです。現状の改善には、燃料そのものからアプローチする必要があると語ります。

「皆さんの健康を守るためにも、林業現場の安全性を高めるためにも、私たちはこの取り組みを行っています。まずは排ガスを安全で健康的なものにできることを知っていただき、その上で使うかどうかを選んでいただければと思います」
今回協賛いただいたことで、農林高校の先生や生徒の皆さんにも、チェンソーと排ガスの関係について考えるきっかけになっていれば幸いです。さらに、今年の優勝校には、一般社団法人ぎふフォレスター協会から賞金も特別協賛していただいています(後日、学校で使える備品を寄付いたします)。ご協力いただいた皆さま、ありがとうございました!

また、当日は林業求人サイトを運営している株式会社RINDOの方にもオブザーバーとして参画いただきました。今後、他地域での展開について連携して取り組んでいけないかと考えています。
一方、全国の高校で森林・林業系の学科が減少する傾向が見られ、このままでは将来的に姿を消す地域も出てくるかもしれません。だからこそ、当初から構想していた、普通科の高校生や一般の方を対象にしたイベントも具体的に検討していこうと考え始めているところです。一緒に企画したいという志しある方はぜひお声掛けください!
来年は実際にどうなるか、私たちもまだ予想がつきませんが、また変化した形で当日を迎えられるように今からやれることを着実に進めていきます。それではまた来年、お会いしましょう!
▶🌲ぎふ林業甲子園2025レポート|高校生が岐阜の森で挑んだ一日 | 森のジョブステーションぎふ|岐阜の林業を知るポータルサイト