ひビキのヒび
# 37
ぎふ木遊館と
響hibi-ki STORE交流記
2025.3.11

国産木材を使ったアイテムを厳選したセレクトショップ〈響hibi-ki STORE〉の実店舗は、岐阜県が運営する木育施設〈ぎふ木遊館〉の中にあります。木のおもちゃを扱ううち、気づけば木育の世界に足を踏み入れることとなりました。そんな今の響hibi-ki STOREとぎふ木遊館の関係に迫ります。

写真:飛騨五木株式会社/文:田中 菜月

ぎふ木遊館とは?

日本で2番目の森林率(約81%)を有する岐阜県は、古くから林業や木工が盛んであり、木とともに生きる文化は地域の一つのアイデンティティとなっています。こうした資源や文化を次世代につないでいこうと、岐阜県では「ぎふ木育30年ビジョン」を掲げてさまざまな取り組みを展開しています。
※ぎふ木育30年ビジョンの詳細:https://www.pref.gifu.lg.jp/page/103470.html

ぎふ木遊館のメインとなる広場。

このビジョンを広げる拠点として、また、誰でも気軽に木育を体験できる場として、2020年7月に〈ぎふ木遊館〉は開館しました。館内には樹齢400年のスギの巨木をくり抜いたトンネルや、木玉プールなど、岐阜の木の遊具が充実し、常設のおもちゃは100種類以上に及びます。その多くが岐阜県内の作家さんが県産材でつくったおもちゃたちです。

施設内には森や木にくわしい県職員の方はもちろん、ぎふ木育の知識をもった“ぎふ木育サポーター”(通称:さとやまさん)が常駐しています。フロアで子どもたちの遊びを見守るさとやまさんは、子どもたちの新たな発見や学びを引き出す存在でもあります。

2022年からは響hibi-kiの運営元である飛騨五木株式会社が、木遊館の木育体験サポート業務を委託業務として担当させてもらい、県の方やさとやまさんとともに施設づくりに励んできました。ぎふ木育をさらに周知するため、響hibi-ki STOREも二人三脚で木の魅力を届けてきたのでした。

2024年5月にオアシス21(名古屋市)で開かれたイベントに一緒に出店。写真左から葛西店長、臼井館長。

今回は響hibi-ki STORE店長の葛西さんとともに、ぎふ木遊館館長の臼井規浩さんにお話しを聞きました。今では1日3回、館長がお店に寄ってくれるほどに交流の機会は増えているそうですが、最初の頃はあまり接点がなかったと言います。何をきっかけに交流が増えたのでしょうか。

「あなたが変なことよく言うでやろね」(臼井館長)

「言ってない!」(葛西さん)

筆者が響hibi-ki STOREを訪れると、館長と店長が親子のように会話している様子をよく見かけます。ですが、そんな微笑ましい姿も、この春から見れなくなりそうなのです。というのも、3月末で臼井館長は定年退職し、木遊館から離れてしまいます。退職される前に、どんな思いで館長を務めてきたのか聞いてみたいと思い、木遊館でのこれまでを振り返ってもらいました。

ギターを奏でる館長

岐阜県岐阜市出身の臼井館長は、岐阜大学で林学を学び、大学院を卒業後、岐阜県に入庁します。森林科学の技術職として林政部に所属し、林業普及指導員の仕事や林道の工事を担当。所属長になってからは下呂農林事務所所長、本庁の治山課長・森林整備課長、恵那農林事務所長を務め、2021年にぎふ木遊館の館長となります。

館長になってからは、皇室行事として皇族の方が3度木遊館を訪れるタイミングと重なりました。2024年10月には天皇皇后両陛下がご来館し、施設の代表者として館内を案内するなど大役を果たした臼井館長。「なかなか来ていただけるものではないですし、ぎふ木遊館の名誉でもあると思います」と話します。

●宮内庁ホームページ
秋篠宮皇嗣妃殿下 ぎふ木遊館ご視察(岐阜県岐阜市) – 宮内庁
天皇皇后両陛下 ご覧(ぎふ木遊館(岐阜市)) – 宮内庁

加えて、館長にとってはもう一つ印象に残っていることがあると言います。


「やっぱり金太郎かなあ。4月に着任して、いきなり5月のこどもの日に『金太郎の格好をしてほしい』って言われたんです。どんな職場にきちまったんやろって思って、これは大変なことになったなと思いましたね(笑)。そこで洗礼を受けたというか、ここは館長がふんぞり返ってる場所じゃなくて、館長が何でもやらなくちゃいけないんだなって思いました」

サンタクロースに扮する臼井館長。響hibi-ki STOREのスタッフとともに。

「ここでの4年間というのはなんでもありの世界でした。毎年クリスマスはサンタクロースの格好をしましたし。とにかく館長というのはこれでいいのかなと思いながらやっていましたね。さとやまさんから頼まれると断ることができず、下手なギターも喜んでもらえるのでイベントで演奏することもありました。県職員になって36年になるのかな。ここの4年っていうのは自分にとって特別な職場だったかなと思います」

クリスマスイベントでギターを演奏する臼井館長。

これまでの仕事と比べると、確かにギャップはかなり大きいでしょう。木遊館での活動が印象深くなるのも頷けます。

「サンタクロースは通算で4回やったんやけどさ、子どもの反応って面白くって。サンタクロースの格好をしてギター持ってる僕の前に来て、『サンタさんなんてこの世にいないもん!』って子がいたり、親御さんからは『この子、実物のサンタさんを見れたの初めてなんです。また来年もお願いします』って言ってくださったり。そういうのが毎年ある。『動くサンタさんを初めて見ました』って。そういうときは罪悪感っていうかさ。『別に俺フィンランド人でもないし、ただの館長やし』って思いながら。でも、それはそれで子どもにとっては思い出に残る一つのシーンをつくれたのかなとも思う。大きくなってどう思うかわからないけどね」

スタッフとともに木遊館の今を形づくってきた館長だからこそ、愛される存在になっていることを実感しました。館長のギターが聞けなくなるのかと思うとさみしくなります。

ぎふ木遊館の推しポイント!

4年間、ぎふ木遊館を下支えしてきた臼井館長にとって、施設として何よりも誇れるものが“さとやまさん”の存在です。

「さとやまさんの笑顔と、愛情あふれる対応。これは日本一だと思ってます。さとやまさん=木遊館なんやて。だから、さとやまさんがいかに気分よく、自分たちのやりたい活動ができるような環境をつくれるかが僕ら県の職員の一番の仕事かなって思うんです。その間に入ってくれているのが飛騨五木さん。響hibi-ki STOREもそうだけど、明るい方が多いので非常に楽しい雰囲気の中で施設運営ができているのかなと思います」

さとやまさんに還暦をお祝いしてもらう臼井館長。

最後に、今後のぎふ木遊館について館長の視点で考えていることを教えてもらいました。

「今は小さいお子さんが主なんですが、ご年配の方も含めた幅広い年齢層の方に親しんでもらえる場所にしていきたいです。ぎふ木育は子どもだけが対象ではないですから。だからこそ、多くの民間企業とも連携して、いろんな利用形態をもっと広げていきたいなと考えています」

「それと去年、中津川市と高山市に木遊館のサテライト施設が2か所できて、今後も増えていく予定です。その中核施設がぎふ木遊館なので、ぎふ木育の全県展開につながるように、サテライト施設との連携を図っていきたいと思います。それぞれの木遊館が、地域の特性を活かしながら、地元の方に親しまれる愛される施設になってもらえるように、ぎふ木遊館としても協力していきたいですね」

「あってよかった」「この先もずっと残し続けてほしい」と地域の方々に思ってもらえるような施設ってなんだろうか。そんなことを考え続けながら、お互いに切磋琢磨しながら、ぎふ木遊館とともに歩んでいきたいと思います!

●Information
ぎふ木遊館
〒502-8503 岐阜市学園町2-33
TEL:058-215-1515
開館時間:10:00~11:30/13:00~14:30/15:00~16:30
※事前予約制16時以降の入館はできません。
休館日:水曜日
入場料:300円(高校生以下は無料)
https://mokuyukan.pref.gifu.lg.jp/

田中 菜月 (たなか・なつき)
1990年生まれ岐阜市出身。アイドルオタク時代に推しメンが出ていたテレビ番組を視聴中に林業と出会う。仕事を辞めて岐阜県立森林文化アカデミーへ入学し、卒業後は飛騨五木株式会社に入社。現在は主に響hibi-ki編集部として活動中。